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行きませんけど、と思った。
何がしたいのこの人、とはもっと思った。
この人変な人だ、と脳が彼への印象を改め始める。
「え、なんで、意味がわからないんですけど」
思わず溢れたかわいくない言い回しも、しかし勘弁してほしい、当然だと思う。
他に言いようがない程、意味不明だ。
「あは！結構言うね和田さん」
「いや、本当、何か用ですか？えっと、ルイスくん」
「おお、俺のこと知ってんだあ」
「そりゃ、まあ」
「俺うるさいから？でしょ！あはは！」
確かにうるさいので有名でもあります、という言葉は、話がどうでもいい方向にそれかけるのを察知して喉の奥に押し込んだ。
「それで、屋上に何かあるんですか」
「あ、そうそう！いや、俺和田さんと喋ってみたいんだよね」
「ええ……？」
「だから屋上来てほしいなって！」
「いや怖い怖い近いです」
「ね、ダメ？」
ズイ、と顔を近づけてそうお願いする顔が、会話の強引さとは裏腹に甘えるような表情でなんだか戸惑ってしまう。
「屋上行こうよ、それで、俺ら友達になろ」
なんだそれ。
どうしてそんなことを私に言うの。
断らないで、お願い、と今にも言いそうな顔をしているのは何で？
何もかもが脈絡のないこの誘いを、拒否できない理由なんて、きっとない。
彼とは初めて言葉を交わしてたった数分のおざなりな関係性のはずなのに。
どうしてか、私はゆるりと頷いてしまった。
いつもの騒がしさはなりを潜めてどこか寂しそうな顔をしている彼を、ガッカリさせたくない気がした。
「……やった」
また、嬉しそうに彼は笑って、行こ、と私の腕を引っ張った。
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作者名：生駒 | 作成日時：2021年12月18日 23時
