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…
「Aさん。昨日俺が帰って来た時の事、覚えとる?」
折角先程しらばっくれた昨夜の出来事を、いとも簡単に見破られた。私は薄く笑みを浮かべて治の膝にストンと腰を下ろした。
「……本当は狸寝入りしようと思ってたけど、酔っ払った治が可愛くてね、つい」
私がそう言うと治はなぜか少しだけ照れてように俯いた。
…
「揶揄わんといてや」
ぽつりとそう呟く治がやはり堪らなく愛おしくて、頭を撫でた。
「俺、ドSとちゃうよな?」
「ドSって、治が?…笑」
「昨日ツムに言われた……」
「うーん…まあ素質はあると思うけど、私は少なくともそうは思わないな。…それとも、治が加虐嗜好者だって捉えられるような発言をしたって事?」
「は?!ちゃうし…!!
お、俺はただ、お前を酔わせたいって言うただけで……俺そんな悪趣味ちゃうねんぞ」
彼が色々口を滑らせながら慌てて弁解するので「知ってるよ。2年も一緒にいるんだから」と淡白な調子で私は言った。
「で、なんでハイライフなんか飲んだの?」
「バカにされっぱは悔しいやんけ。せやけど普通に美味かったわ。」
「美味しいよね、前に私も飲んだ。」
「一杯飲んだら体が受け付けんくなったけどな。」
「それで、それを私にも作ろうとしたと。」
「おん、その予定やったけど……なんやどうやっても勝てる気せんくなったわ」
「………」
なぜ男は飲めない事を恥じるのだろう?治の場合、その恥じている事に対しても恥じているので面倒くさい。
暫く私が黙っていると、やがてその大きな目と目が合う。
「一緒に飲もうよ、一杯だけ」
「……え?」
「勝とうとしなくてよくない?アルコールゲージが同じ位の人同士の方が無理しないでいいし、楽しいでしょ?」
「……そんな目で見んといてくれ」
顔がこれまでに無い位赤い治の額に私は優しくキスをして、その大きな体をぎゅっと抱きしめた。朝からこんなにも愛おしさが盛ってしまって大変だ。
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「私、治と一緒に酔いたいな。」
耳元でそう呟くと、ビクッと肩を少し震わした治は負けじと小さな声で「…ずるいねん」とだけ言った。
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兎海(プロフ) - 壬生桜さん» 嬉しいです!読んでくださりありがとうございます^^ (2020年7月19日 23時) (レス) id: 7a66186871 (このIDを非表示/違反報告)
壬生桜(プロフ) - あぁ。好き!こういう治いい!ますます治に惚れてまう! (2020年7月17日 3時) (レス) id: fa982b1939 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:兎海 | 作成日時:2020年7月2日 23時