夜が明ける、5分と1秒前。【騎士A】〈1st〉

💜#35 ページ36

yukimura.💜

気の所為と割り切るには明確過ぎるから、

恐る恐る腕を伸ばして、指先で紙を摘んだ。

紙...じゃない。

...写真?

すっ、と目を細める。

なんだろう。

なんか、既視感がある。

ゆっくり写真を捲る。

最初に目に入ったのは、蛍光ペンで書かれた文字。

【騎士Aとして活動始めるぞ!!死ぬまで走り続ける!!】

その文字の後ろには、

数年前に撮った、色んな笑顔が溢れた騎士Aメンバーが写っていた。

y「っ、」

はぁっ、と深い呼吸をすると同時に、涙が溢れてきた。

息をするのが苦しくなって。

口元を抑えながら、肺を上下させる。

てるとの真っ直ぐな意志がひしひしと伝わって来て。

既に事後となってしまった結末を、

酷く恨んだ。

誰よりも強気で笑っていたのは、ばぁうで。

誰よりも優しく微笑んでいたのは、まひとで。

誰よりも楽しそうに笑っていたのは、しゆんで。

誰よりも頼りがいがありそうに口角を上げていたのは、そうまで。

誰よりも真っ直ぐな瞳で微笑んでいたのは、てるとで。

誰よりも感情を抑えて笑っていたのは、僕だ。

なんでこんな時にまでキャラを作りたがるのか不明だ。

僕はもっと感情を分かりやすく伝えていれば良かったのかもしれない。

色々な後悔が僕を襲ってくる。

その中で、一筋の光が僕の心を照らした。

赤くて、美しい光。

＿＿＿幸せになって欲しい。＿＿＿

意思の強さ、活動への熱量が半端じゃなくて。

多分誰よりも社会に居た時間が長いから。

本当に、

本当に心から、思ってくれてる。

だから、そうやって面と向かって言葉にしてくれるし、

本気でぶつかって来てくれる。

...その思いを、裏切った。

その思いを踏み躙った。

どうしようも無い自己嫌悪が僕を蝕む。

最低だ。

死ね。

死ね。

本当に無神経で、滑稽で、醜い。

自己中心的な態度で、

きっと多分、

この卒業も、今の気分だと思う。

絶対に後悔する。

【多分】は【絶対】に変わって行く。

卒業するまでの計画は狂う程にして来たのに。

卒業してからの計画なんか1mmもしてなかった。

なんて傲慢なんだろう。

何処からか聞こえる声に手を伸ばしても、

自分から作ってしまった距離は縮まる筈も無い。

...どれだけ、背丈が変わろうとも。

変わらない、何かがありますように。

昔歌った歌詞の一部が思い出される。

涙と言う水に溺れた心臓は、

止まること無く感情を剥き出しにしている。

...僕だって、もっと。

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