ボクノハナシ

ボクノハナシ、ニンギョウノユメ ページ23

ニアーチェside 生徒会室にて




　五奇人が討伐されて何日か経った。今もなお僕は生徒会の……いや、天祥院さんの人形をやっている。やっぱり、僕に人間は向いて無かったんだな。



英智「ニアーチェ、紅茶を淹れてきてくれるかい？」
ニアーチェ「……かしこまりました」




　僕はもう『A』ではなく、『ニアーチェ』として生きるように命じられていた。どうやら天祥院さんも宗………斎宮さんと同じこの姿の方が好きらしい。
　


ニアーチェ「……お待たせ致しました」



　机の上に紅茶を置こうとしたら自分の手が震えていることに気づいた。それだけではない。足元もおぼつかない様子で、目眩もしてきた。



英智「ニアーチェ……？！」



　作業中にも関わらず僕の異変に気づいたのか、天祥院さんが僕を支えてくれる。生徒会室にいるのが僕達だけで良かった。あまり、大事にしたく無かったから……。


　そこで僕の視界が黒に染まった。



















　








　



















　雨が降っている音がする。生憎、窓が高くて確認できなかったけど。
　そんなことより、ここはどこだ？……そして……僕は？
　朦朧とした頭で考える。とりあえず辺りを見回してみるとどこか見慣れた光景が広がっていた。ここは……。




？「謝罪が聞こえねぇぞ！ニアーチェ・ティアドロフ！」




　思い出した、ここは『オシオキ部屋』だ。そして僕の名前はニアーチェ。段々と頭の中の霧が晴れていく感じがする。
　確かこの屋敷の主人の人形で、人間になることを許されていない可哀想な奴。
　



？「聞こえてんのか、ニアーチェ！！」



　"聞こえてる……ごめんなさい……"
　そう言いたいのに口が思うように開いてくれない。身体も動かなくなってきた。まぶたが……重い……。
　部屋に１つだけ付いてる窓からいきなり光が見えた。そのすぐ後に聞こえるトラウマの音。

　
　怖い……。そう感じてしまう僕は人形じゃ無い。感情を持つ人形があってはならない。あぁ…僕は人形になれなかったんだな……。
　

　それに、さっきのはきっと夢だ。いや……夢というより薬や毒で見た幻覚だった。じゃなきゃあんな幸せな……僕が人間になるなんてことあり得ないから……。少し考えれば分かることだった。……僕が幸せになるなんて無いんだから……。




　………そのとき人形の心臓が静かに止まった。

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