【文スト】陸 全身黒の、美しいひと。【男主】

佰肆拾漆. 表情と感情と ページ7

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【中也 視点】









「…」






自分を撃った人間の死体を、ただじっと見つめている其奴。


…どんな気持ちで、彼は佇んでいるのだろうか。






「…毒のカプセルは抜いたんですね」

中「？あ、ああ」


「注射痕も無し、と。打撲痕などはありますね」

中「…手前、疑ってんのか？」

「何をです？」







ふふ、と彼は笑う。

だがその目は、全くと言って感情を映していない。




…一体、何を考えている？







「…まあでも安心しました。狙撃手がポートマフィア(貴方達)で無くて」







やけに、穏やかな微笑み。

…ぞくりと、背筋が凍るのが分かる。







中「…ヘェ、それを確認したかったわけか」

「念のためですよ。まあ、そのおかげで再び何か行動を起こす必要が出てきましたが」







そう言って、奴はわざとらしく溜息をつく。


それは皮肉か何かだろうか。







中「…なあ、聞いてもいいか」

「どうぞ？僕の答えられる範囲でしたら」

中「…手前は、何に囚われてる？」






その瞬間、僅かながら彼の表情が強張る。







「…何のことでしょう」

中「手前の行動に、意思はあるのか？」

「意思、ですか？」

中「手前は誰かの意思を代わりに持ってる人形みたいだ」


「ふふ、…僕が？」







…一瞬で、彼の目の色が変わる。

鮮血のような真紅の瞳が、俺を射抜くように見つめる。




そんな攻撃的な瞳とは裏腹に、口元はやけに穏やかに笑みを浮かべている。








「仕事に意思なんて、邪魔ではありませんか」







思わず息を呑む。

此奴は、仕事のためなら意思を捨てるというのか。




…それでいて、どうしてこんなにも美しく微笑むのだろう。


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