佰肆拾肆. それはあの日の ページ4
.
【太宰 視点】
太「…Aくん」
部屋の扉を開けると、窓際で体を起こして本を読んでいる彼の姿が。
…目を、覚ましたのか。
「…ああ、太宰くん」
太「っ、」
思わず駆け寄り、彼の体を抱き締める。
「…外套に血が、」
太「それよりも他に気に掛けるべきことがあるだろう？」
「…ごめんね、太宰くん」
優しい声が、耳元で響く。
…外套についた血など、気にもしていなかった。
だが、その血は間違いなく彼のものだろう。
太「…Aくん、あの話の続きを、聞いてもいいかい」
「そうだね、話の途中だったっけ」
太「…戸籍がないというのは、本当かい」
「…乱歩さんが話したの？」
太「ああ、」
そう答えると、彼は意を決したように息を吐く。
「本当だよ。神楽Aは、僕が生み出した幻想に過ぎない」
太「…そうか」
「僕がこの名前でいられるのは、社長のおかげなんだ。…だから僕は此処にいる」
ふと、彼の右腕を見つめる。
…まだ刻まれている傷痕は、あの日の誓いの証だ。
与謝野先生に頼んで、残してもらった。
証を消したくないなど、我ながら子どものようだ。
「…君には、いつか言わなきゃって思ってた」
太「それはどうして？」
「あの日、約束したから」
そう言って、彼は私の右腕に触れる。
しっかりと目が合って、思わずドキリとする。
…彼は深く息を吐き、言葉を紡ぎ始めた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 854人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
魔夜美(プロフ) - 更新頑張ってください (2017年5月3日 16時) (
レス) id: a15b068210 (このIDを非表示/違反報告)
猫 - すごく面白いです！更新頑張ってください！ (2017年3月27日 0時) (レス) id: 6d1c031c5c (このIDを非表示/違反報告)
栗医務 - やばみ (2017年2月27日 3時) (レス) id: 8c1f057850 (このIDを非表示/違反報告)
シェエラ(プロフ) - いつも楽しく読んでます＾＾ (2017年2月6日 18時) (レス) id: 77f45bf4f9 (このIDを非表示/違反報告)
ウェン - いつも楽しみにしてます！！これからも無理せず頑張ってください (2017年2月2日 18時) (レス) id: 8f2a77e445 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：春海｡・:＋° | 作成日時：2017年2月2日 13時
