佰陸拾捌. 伸ばした腕 ページ28
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【国木田 視点】
敦「社長が襲われたって本当ですか?!」
勢いよく扉を開け、敦が飛び込んでくる。
国「…ああ、一命は取り留めたが謎の症状で意識不明。与謝野女医でも治せんらしい」
太「屹度此の前の異能者狩りの続きだろうね。…只、犯人は別人だ。手口も違うしね」
国「犯人の特徴は?」
太宰は気怠げに説明を始める。
太「正体不明の異能を使うことと仮面を被っていることだけ」
国「『仮面の暗殺者』か…」
敦の表情が少しだけ曇る。
…何か言いたげだ。
敦「…Aさんはこの事は?」
太「勿論伝えたよ。直ぐに来たさ、花を持ってね」
敦「え、でも…」
国「行きたい処が在ると云ってまた直ぐに出て行ったぞ」
丁度敦が此処に来る二十分程前だ。
暫く独りで屋上に居たかと思うと、ひどく穏やかな顔で俺に声を掛け、出掛けて行った。
…引き留める腕は、出せなかった。
敦「…Aさんの様子は、如何でしたか…?」
太「心底動揺していただろうね。花束を置く手が一寸だけ震えていた」
…確かに、彼にしては珍しく動揺しているみたいだった。
あんなにも脆く儚く見える彼は、初めて見た。
国「…社長を慕ってるからな、Aさんも」
太「ああ見えてかなりね」
雲の上をふわふわと歩いているようで、時折見せる人間味。
…彼に目を奪われるのは、その所為だろう。
彼の華奢な背中を追いかけ続け、もうどれくらいになるだろうか。
俺が彼の目に映る日は、まだ来そうにない。
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魔夜美(プロフ) - 更新頑張ってください (2017年5月3日 16時) (レス) id: a15b068210 (このIDを非表示/違反報告)
猫 - すごく面白いです!更新頑張ってください! (2017年3月27日 0時) (レス) id: 6d1c031c5c (このIDを非表示/違反報告)
栗医務 - やばみ (2017年2月27日 3時) (レス) id: 8c1f057850 (このIDを非表示/違反報告)
シェエラ(プロフ) - いつも楽しく読んでます^^ (2017年2月6日 18時) (レス) id: 77f45bf4f9 (このIDを非表示/違反報告)
ウェン - いつも楽しみにしてます!!これからも無理せず頑張ってください (2017年2月2日 18時) (レス) id: 8f2a77e445 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春海。・:+° | 作成日時:2017年2月2日 13時