【文スト】陸 全身黒の、美しいひと。【男主】

佰陸拾伍. 遊戯と憂い ページ25

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【敦 視点】








控えめなノックと共に、扉が開く。







エド「…乱歩君、いるであるか………？」


乱「やあ、君か！」






扉から顔を覗かせているのは、肩にちょこんとアライグマを乗せているポオさんだ。

…ギルド戦以来、彼はちょくちょく探偵社に顔を出している。







乱「…あー、ちょっと待ってね、Aくーーん」

エド「あ、えと…」


「もうお菓子無くなったんですか……あ、」







社の奥の方から、大量のお菓子を抱えたAさんが顔を覗かせる。





ポオさんの姿を見つけると、彼はぱっと笑顔になって此方にやってくる。

…ポオさんと一緒の時のAさんは、心做しか無邪気に見える。






「新作が出来たのかい？」

エド「あ、いや、今日は推理遊戯をしに」

乱「へえ！そいつは殊勝だな」



エド「これが資料である。さる警備会社の博士が同僚を殺して……」








そう言って、ポオさんは乱歩さんとAさんの前に資料を置く。


乱歩さんは眼鏡を掛けて、ある程度読んだところで一枚の写真を選ぶ。







乱「ふうん、中々巧妙な事件だ」

「…犯人は博士ではない、ですよね乱歩さん」

乱「そう。犯人は会長だよ」






Aさんは、資料をずっと眺めている。

…何か、気になることでもあるのだろうか。







敦「…あの、Aさん」






ポオさんと乱歩さんが盛り上がるのを横目に、僕はAさんにそっと声をかける。






「…ん、何？」

敦「…何だか、神妙な顔をしていたので……」


「そう？…かもしれないね」






Aさんは、どこか困ったように微笑む。

…この人の憂いを、僕はきっと知る由もないのだろう。



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