佰陸拾壱. 本と珈琲 ページ21
.
【太宰 視点】
「…ギルドの残党ねえ……」
太「おや、君ならもう既に嗅ぎつけてるのかと」
「生憎だけど興味が湧かないね」
1階にある喫茶処・うずまきにて。
Aは洋書を読みながら珈琲を飲んでいる。
その姿だけで様になるから狡いものだ。
太「意外だねえ、興味を示すかと思ったけど」
「僕はもうとっくにギルドとは関係を絶ったからね。
…やあルーシー、ご気分は?」
ル「まあまあよ。おかわりは?」
「同じものを」
彼はいつも何かしらの洋書を読んでいるが、見る度に書かれている言語は違う気がする。
今日は何処の国の言語だろうか。
「この店も大変だったみたいだね。国木田くんの様子から見るに、修理費は探偵社から?」
太「御明察」
「やっぱりね。ごめんね、あの時は社長の御遣いがあったものだから」
ふふ、と笑って彼は出された珈琲を飲む。
太「森さんに毒を盛られたと聞いたけど、本当かい?」
「本当だよ。あの時はどうしようかと思ったけど」
太「Aくん、もうポートマフィアには近づくべきじゃない。
…あの人は相当君に執心しているらしい」
ぱたん、と本が閉じられる。
その本を見つめる彼の表情は、真剣そのものだ。
「…そうみたいだね」
太「何を、読んでいるんだい」
「目が覚めたら虫になってしまっていた話。あと、今日はドイツ語だよ」
太「…へえ、」
聞いたことのある話だ。
…カフカの「変身」だろう。
わざわざそんな本を読むのには、何か意図でもあるのだろうか。
「…この本、もう読まないかもしれないな」
太「それは、どうして?」
「さあ…何でだろう」
そう言って珈琲を飲み干す彼は、どこか哀しげだった。
.
854人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
魔夜美(プロフ) - 更新頑張ってください (2017年5月3日 16時) (レス) id: a15b068210 (このIDを非表示/違反報告)
猫 - すごく面白いです!更新頑張ってください! (2017年3月27日 0時) (レス) id: 6d1c031c5c (このIDを非表示/違反報告)
栗医務 - やばみ (2017年2月27日 3時) (レス) id: 8c1f057850 (このIDを非表示/違反報告)
シェエラ(プロフ) - いつも楽しく読んでます^^ (2017年2月6日 18時) (レス) id: 77f45bf4f9 (このIDを非表示/違反報告)
ウェン - いつも楽しみにしてます!!これからも無理せず頑張ってください (2017年2月2日 18時) (レス) id: 8f2a77e445 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:春海。・:+° | 作成日時:2017年2月2日 13時