佰肆拾. 二人の思惑 ページ31
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【乱歩 視点】
乱「…太宰、説明してくれる?」
太「今日はいつもと様子が違いました。…もう少し気をつけるべきだった」
社内の医務室。
目の前のベッドに横たわっているのはAだ。
…いつにも増して生気の無い寝顔は、思わず触れてしまいそうになる。
乱「Aは何か言ってた?」
太「薔薇は好きか、と」
乱「…薔薇、ねえ。それはまた何故?」
太「名前が違っても、その花を愛せるかと言ってましたね」
乱「…ああ、成程ね」
名前、か。
…Aがそんなことを言うのには、やはり理由があるのだろう。
乱「彼がリストに載っていない理由は聞いた?」
太「いえ、」
乱「…彼には、戸籍が無いんだ」
そう言うと、太宰は少し驚いたように此方を見る。
太「…戸籍が?」
乱「『神楽 A』という人間は、彼自身と周りの環境が作り出したものだ。
…その契機を作ったのは、他でもないギルドだったけどね」
…こんなことを喋るのは、多分初めてだ。
勿論、本人に確認したこともない。
太「…だから、リストには載っていないと」
乱「そう。だから彼は薔薇の話をしたんじゃないかな」
ふと、眠るAの顔を見る。
まるでよくできた人形みたいだ。
彼は妖しさと狂気を、ひた隠しにして生きている。
乱「…早く起きてよ、A」
さらりと、綺麗な髪に触れる。
…隣にいる太宰の表情が歪んだことに気がつくのは、あと数分後の話だ。
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シェエラ(プロフ) - いつも楽しく、続きを楽しみに読んでます。ありがとうございます。 (2017年1月31日 20時) (レス) id: 1ac12c7cb6 (このIDを非表示/違反報告)
マカロン - すごい、面白いです!!!!続きが気になって仕方ありません!!!更新頑張ってください!! (2017年1月30日 1時) (レス) id: 6d1c031c5c (このIDを非表示/違反報告)
春海。・:+°(プロフ) - シェエラさん» 主くんが子どもみたいに見えるように意識しました…!笑 そう感じていただけたなら幸いです!(意味深) (2017年1月5日 13時) (レス) id: 324ed245b3 (このIDを非表示/違反報告)
シェエラ(プロフ) - 主がかわいく思えるます。なんとなくですが、ちょこんと座ってる感じがして。エドガーさんの小説を読んでる主が本当の主の姿なのかなぁって思いました。 (2017年1月5日 8時) (レス) id: e4ad18c1a6 (このIDを非表示/違反報告)
春海。・:+°(プロフ) - SEAN◎さん» う、美しい…?!なんと勿体ないお言葉……ありがとうございます…!エドガーさんが愛おしく思える今日この頃です…笑 更新がんばりますー! (2017年1月4日 23時) (レス) id: 324ed245b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春海。・:+° | 作成日時:2016年12月28日 19時