【文スト】伍 全身黒の、美しいひと。【男主】

佰弐拾参. 素性 ページ14

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「っ何を、」


鴎「神楽Aというのは偽名だね。道理で一切の情報が入ってこないわけだ」

「…それで？」






何故、僕は彼に抱き締められているのだろう。


そんな状況にもかかわらず、僕は表情を保つのに必死だ。






…『高柳』など、久しぶりに聞いた。

もう聞くことも無いだろうとさえ思っていた名だ。








鴎「それに君は、あの人の若かりし頃の姿に似ている」

「あの人というのは、どなたのことです」


鴎「…横浜の街の、光と闇の双方に影響を及ぼすあの人さ」






そんな人物は、一人しかいない。


…夏目先生のことだろう。








「ですが僕には、その方と血縁関係など……」

鴎「君が『高柳 海』であれば、そういう訳でも無くなるのだよ」


「…何を、仰っているんです」







少しだけ腕の力が弱まり、しっかりと目が合う。

この人は、何を考えている？




…頭の片隅で、『この人は危険だ』と警告が鳴る。







鴎「…これ以上は、君が君のことを教えてくれたらにしよう。どうだね」

「お断りします。それに僕の名前は、神楽です」






目を閉じ、ゆっくりと呼吸をする。






「…離してください。これ以上は貴方に危害を加えかねませんから」







僕は貼り付けたような笑みを浮かべ、彼を見つめる。

…これ以上此処にいては、心が乱れる。




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