佰弐拾弐. 彼の名前 ページ13
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【鴎外 視点】
鴎「ふっ…ははは、」
「…如何、なさったのです」
彼の表情が、僅かに険しくなる。
鴎「やっと納得がいったよ、神楽くん…いや、別の名で呼んだ方がいいかい」
「…何のことです、」
鴎「だが気になる点が一つある。尋ねても?」
「僕に答えられることでしたら」
穏やかな微笑みを浮かべてはいるが、彼の目は訝しげに私を見ている。
鴎「十二年前に倒産した大企業を、君は知ってるかね」
「十二年前…申し訳ありません、その頃はすでに外つ国にいたものですから」
彼は、恐ろしい程に感情を見せずに微笑む。
…その美しさは、何処から来るのか。
鴎「ほう、…では、『高柳』という名に聞き覚えは?」
「高柳、ですか。…いえ、存じ上げません」
鴎「では聞き方を変えよう。…君は何故生きている?」
「何故、と言いますと?」
鴎「君は十二年前に亡くなった。そうではないのかね、…『高柳 海』くん?」
彼の表情が、僅かに強張る。
…恐らく正解だろう。
「『高柳 海』というのは、どなたです?」
鴎「…頑なだね、随分と」
「初めて聞く名ですから」
鴎「…だがね、君がその男の子だとすると全て辻褄が合うのだよ」
「へえ、どのように?」
不敵な笑みを浮かべる彼を、優しく抱き締める。
思った通りの華奢な肩が、小さく跳ねた。
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シェエラ(プロフ) - いつも楽しく、続きを楽しみに読んでます。ありがとうございます。 (2017年1月31日 20時) (レス) id: 1ac12c7cb6 (このIDを非表示/違反報告)
マカロン - すごい、面白いです!!!!続きが気になって仕方ありません!!!更新頑張ってください!! (2017年1月30日 1時) (レス) id: 6d1c031c5c (このIDを非表示/違反報告)
春海。・:+°(プロフ) - シェエラさん» 主くんが子どもみたいに見えるように意識しました…!笑 そう感じていただけたなら幸いです!(意味深) (2017年1月5日 13時) (レス) id: 324ed245b3 (このIDを非表示/違反報告)
シェエラ(プロフ) - 主がかわいく思えるます。なんとなくですが、ちょこんと座ってる感じがして。エドガーさんの小説を読んでる主が本当の主の姿なのかなぁって思いました。 (2017年1月5日 8時) (レス) id: e4ad18c1a6 (このIDを非表示/違反報告)
春海。・:+°(プロフ) - SEAN◎さん» う、美しい…?!なんと勿体ないお言葉……ありがとうございます…!エドガーさんが愛おしく思える今日この頃です…笑 更新がんばりますー! (2017年1月4日 23時) (レス) id: 324ed245b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春海。・:+° | 作成日時:2016年12月28日 19時