【文スト】肆 全身黒の、美しいひと。【男主】

捌拾参. 頼み ページ4

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【ルーシー 視点】









「…ルーシー、ちょっといい？」

ル「っ、Aさん…」






廊下に出たところで、ちょうど部屋から出てきたAさんに呼び止められる。


真っ白なサテンのパジャマの上に長いカーディガンを羽織っている彼は、まだ顔色が悪い。




…当たり前だ。2時間前に、倒れたばかりなのだから。






ル「どう、なさったの？」

「お願いがあるんだ、ルーシー。君にしか頼めない」






彼は私の手を掴んで、片手で指を鳴らす。


…廊下の壁にかかっている時計が、止まっている。







ル「…な、なに？」


「この手紙を、敦くんに渡してほしい」

ル「…手紙、？」






そう言って、私の手に黒い封筒を持たせる彼。


…何故、直接渡さないのだろうか。







ル「でも、」

「僕には彼の部屋に入る権限がない。それに、…こんな姿では、心配をかけてしまうから」






確かに今の彼は、明らかに体調が優れない様子だ。


でも、そんなことをすれば、…私は今度こそ、ここにはいられなくなる。






「今すぐに渡せとは言わない。でも、もし君が彼と話をできる機会があれば、…けほ、っ」


ル「っ、わかったわ、」






苦しそうに咳き込む彼を支え、私は手紙をポケットに仕舞う。







…この人は、何を考えているのだろう。



昔から他の部下に畏怖され、尊敬されていた彼は、私にはいつも優しい目をしてくれていた。



だからこそ、彼のこんな姿は見たくなかった。






「っ、ありがとう、ルーシー…」






そう言って私に微笑みかけるその表情は、私が一番好きな、彼の綺麗な顔だった。



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