【文スト】肆 全身黒の、美しいひと。【男主】

佰. 駆け引きを ページ21

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【敦 視点】









その扉を開けると。


…電話をしているらしいフィッツジェラルドの後ろ姿と、壁にもたれ掛かっているAさんの姿があった。






フィ「悪いが客人のようだ。また電話する。…愛しているよ、ゼルダ」






ピッ、と電話を切る彼。

…その瞬間、Aさんの表情が少しだけ曇る。






フィ「短い別れだったな、少年。探し物は、これかな？」

敦「貴方が制御端末を守るガード…」



フィ「俺がここまで上り詰めた成功の秘訣、その1だ」






彼はこちらに振り返り、部屋の真ん中に置かれた椅子に端末を置く。






フィ「仕事で一番大事な部分は他人任せにしない。
…ところで、このモビーディックの重量を知ってるか？」


「総重量2万9000トン。上空2kmから落すれば、
…TNT爆弾140トン相当のエネルギーが市内のど真ん中で炸裂するでしょうね」






Aさんがそっと目を閉じながら呟く。


…彼は今、何を思ってそんなにも物憂げな表情をするのだろうか。








敦「…っそんな非道、絶対に許されない」

フィ「秘訣その2。他人の価値観に流されるな。
…とはいえ、君も俺も忙しい。その制御端末を奪い合うなら、シンプルに行こう」






彼が再び背中を見せ、椅子から少し離れる。

その立ち位置は、椅子と僕の距離と同じくらいだ。




そしてAさんは、ちょうど椅子と同じラインにいる。





フィ「3つ数えたら同時に走り、先に端末を手にした方が勝者。君が勝てばモビーディックは好きに動かせ。
だが俺が勝てば、君は俺に服従し、探し物を手伝ってもらう」






ちらりとAさんを見ると、…彼は静かに首を横に振る。

僕は少しだけ深呼吸をして、椅子に置かれた端末を見つめた。



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