【文スト】参 全身黒の、美しいひと。【男主】

漆拾伍. 其の美しさ ページ26

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【フィッツジェラルド 視点】









フィ「ルイーザ君、Aの様子は」

ルイ「…今日も、ずっと窓辺にいらっしゃるようでした。それに、食事もスープを1口だけ……」


フィ「そうか」






Aがここに来てから4日。


彼は、ほとんど何も口にしていないらしい。






フィ「確か君は、彼と会うのは初めてだったな」

ルイ「あ、はい、資料で存じ上げてはいましたが…」

フィ「…どう思った？」



ルイ「もっと恐ろしい方だと思っていました。ですが、本当は優しい心を持っていらっしゃる。
何もかもが美しく、儚げに見えました…」







彼女は、書類を抱きしめてそっと俯く。


彼女の言ったことは、ほとんど正解だろう。





Aは、…心まで美しい子だった。

あんなにも儚げに成長したのも、予想の範囲内だ。







フィ「私が育てたんだ、この手で…」


ルイ「…フランシスさまは、その方を愛していらっしゃるんですね」

フィ「ああ。初めて会った時から、12年だ」







口にしてから、その重みを感じる。



そうか、もう12年も経つのか。

…そんなにも私は、彼を思い続けているのか。






フィ「…少し一人にしてほしい」

ルイ「はい、わかりました」





テーブルに手を組み、思案する。

…彼は、何を考えているのだろうか。




昔から、Aは私の思考よりはるかに先を見て動いていた。





やはり、彼が必要だ。


ギルドにとっても、私にとっても。





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