陸拾玖. 昔話と意思 ページ20
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【敦 視点】
「…敦くん、敦くん起きて」
敦「ん……あ、Aさん…」
「ごめんね、手荒な真似をして」
僕の頭を撫でながら、困ったように眉を下げるAさん。
…そうか、気絶させられたのか。
「…ねえ敦くん、今からとても失礼なことを聞いてしまうけど、許してね」
敦「え、?」
「君は、家族が欲しいと思ったこと、ある?」
Aさんが、僕を見つめる。
彼は、何を思ってそんなことを聞くのだろう。
敦「…え、と」
「ごめんね、忘れてもいいよ」
敦「…いつも、思ってます」
ぽつんと呟く。
今のは呟いたというより、思わず溢れてしまったの方が正しい。
「そっか」
敦「Aさん、どうして急に?」
「…僕にもね、昔は家族がいたんだ。父と母と、兄と。
ちょうど、ギルドに入るまでね」
そうだ。
Aさんは、…ギルドの元団長補佐。
でも、何故Aさんはギルドに入ったんだろう。
「自分で言うのもあれだけど、割と裕福な家庭だったんだ。
でも、僕だけは家族の誰とも似てなくて。
…ずっと、疎まれてたんだ。兄ばっかりが愛されてた」
Aさんが、自嘲気味に笑う。
…何故、そんなにも美しく微笑むのか。
「おまけに、家族は全員異能力者を嫌ってた。…僕が異能力者だと気がついたのは、13歳の時でね。
それからは、狭く暗い屋根裏部屋に軟禁状態だった」
軟禁、状態。
…そんな、ひどいことが。
「僕はずっと孤独だった。…僕を孤独から救ってくれたのが、あの男だったんだ」
敦「…そうだったん、ですか」
「だからこそ、僕は彼を止めなければならないんだ」
僕の方を見て、真剣な表情をするAさん。
敦「…Aさん」
「敦くん、君の力を貸してくれないか」
その強い眼差しに、僕は頷かずにはいられなかった。
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春海。・:+°(プロフ) - 紫霞さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけるとかなりハッピーです!\(^o^)/全力で突き進みますね☆! () (2016年12月2日 22時) (レス) id: 324ed245b3 (このIDを非表示/違反報告)
春海。・:+°(プロフ) - 無影灯さん» コメントありがとうございます!続編も番外編も楽しんでいただけると幸いです!! (2016年12月2日 22時) (レス) id: 324ed245b3 (このIDを非表示/違反報告)
紫霞(プロフ) - コメ2度目失礼します! 展開が素晴らしすぎる(*゚∀゚*) もうこのまま主さんの思うがまま行っちゃってください! 少なくともここに最低じゃなく最高と思ってる人がいます(*´-`) 更新楽しみに待ってます! 長々と失礼しました… (2016年12月2日 20時) (レス) id: 313344121d (このIDを非表示/違反報告)
無影灯(プロフ) - 番外編もめっちゃ楽しみです笑(´∀`*)ウフフな展開もシリアスゥな展開もどっちも最高です!! (2016年12月2日 17時) (レス) id: bed4eaded8 (このIDを非表示/違反報告)
春海。・:+°(プロフ) - 中原 炉騎(Roki)さん» 安心してくださいお母さん!!(えっ) いつもコメントありがとうございます〜!早いとこ更新したくてうずうずしてます。(笑) (2016年11月27日 22時) (レス) id: 324ed245b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春海。・:+° | 作成日時:2016年11月3日 15時