【文スト】続 全身黒の、美しいひと。【男主】

参拾参. 彼の異能 ページ4

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【国木田 視点】








敦「…あの、国木田さん」





おずおずと、俺を見つめる目線。




国「どうした」

敦「…聞きたいことがあって……」

国「…ここでは話しにくいか？」

敦「はい、少し」



困った表情ながらも、その目には強い意志が宿っている。


…あらかた、予想はできているが。




国「じゃあ来い」

敦「はい！」




少しだけ風の吹く屋上。



敦は、おどおどしている。

…言葉を選んでいるのだろうか。





敦「あの、Aさんのことなんですけど…」

国「…」



やはり、Aさんのことか。


彼のあの" 目 "を、コイツも見たはずだ。





敦「Aさんの異能は、どういったものなんですか」

国「…あの人の目は見たか」

敦「はい」



鮮血のような、紅色。

久しぶりに見たあの色は、…その美しさもあって鳥肌が立つ。





国「理由は知っているな」

敦「…はい」


国「あれは使う度に体力を消耗する。社長の異能の効果も相まっているからな｣




人上人不造(人の上に人を造らず)。



異能の制御を可能にするものだ。

Aさんの異能の制御が難しいことから、彼に眼帯をさせているのだと聞いた。





国「だがあの人は、『人間失格』を使うことでそのリミッターを外せる。
…異能を使い続ければ、あの人の人格が崩壊する」


敦「…人格が、？」





敦が、息を呑む。





敦「……あの人、ポートマフィアに入らされようとしてたんです」

国「らしいな。本人がそう言っていた」



敦「…Aさんに見えている世界って、どんな風なんですかね」

国「それは、…誰にもわからないだろうな」





ふと、いつものタバコの匂いが仄かに香る。


…あの人は、ここでいつも吸っているんだったな。





今この場にはないその姿を想像して、ひとつため息をついた。





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