【文スト】全身黒の、美しいひと。【男主】

伍. 黒ずくめの憂鬱 ページ7

.








物陰から、ちらりと様子をうかがう。






太「…あちゃー、結構荒れてるね」


「ああ、あれが虎か」


太「見るのは初めてだろう？」

「うん、結構すごいね」





隣にいる太宰くんは、なぜかちゃっかり僕の腕に抱きついている。


まあ、僕としては目の前の状況の方に興味があるし、別に気にしていないのだけれど。





「太宰くん、どうする？」


太「うーん、Aくんはどうしたい？」





今？そこの袋小路で戦ってる様子を盗み見ているだけだよ？←





「そうだね…僕には何もできないから太宰くん頑張ってくれよ」


太「そしたら私と心中してくれるかい？」


「少しは検討してあげるよ」





僕がそう言うと、太宰くんの目がキラキラと輝き出す。


僕の手をきゅっと握って、目を見つめて。





太「よし、じゃあ行ってくる！」

「いってらっしゃーい」





彼はるんるんスキップをしながら、戦っている二人の間に割って入っていく。


…さすが、『人間失格』。異能力の無効化は対能力者には強すぎる。






太「はーい、そこまで」

樋「…なぜここに、」





つらつらと説明している太宰くんを尻目に、僕は一瞬だけ時を止めて場所を移動する。





芥「…、貴様は」

「ああ、気にしないでください」



倒れている谷崎兄妹に近づき、様子を確認する。



…かろうじてまだ息はあるな。

これなら与謝野先生が治してくれるだろう。



けっこうな大怪我だし。←





なんて考えている間にも、『羅生門』使用者の彼はつらつら話をしている。




芥「…元ポートマフィアの、太宰さん」



まあ、僕は知ってたけどね。

なんて思いながら、しずかにため息をつく。





…僕を見つめる芥川さんの視線に気づいていたのは、おそらく1人もいないだろう。




.

陸. " 唯 "一人の→←肆. じさつ主義者の嗜み

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す