拾陸. 彼の見る世界 ページ18
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【太宰 視点】
「…太宰くん、」
太「やあAくん、どうかしたのかい?」
「あの女性、…佐々城さんだっけ。亡くなったんだってね」
屋上。
風に吹かれながら空を見つめていたところ、Aくんが上がってきた。
太「…そうさ。彼女が真犯人だった」
「六蔵くんは無事だった?」
太「1発撃たれたけれど、命に別条はなかったよ」
風に揺れる、黒い外套。
吸ってもいい?とキセルを取り出して、吸い始める彼。
「…正しさや理想というのは、時に虚しいものだね」
太「ああ。誰も悪くないが故に、彼女を死に追いやってしまった」
「…今までに数多の人を葬ってきた君が、そんなことを言うとはね」
深い、海の底のような藍色の瞳。
じっと私を見つめる彼の目には、…何が見えているのだろうか。
太「それは君もだろう、Aくん」
「何のことだか」
そう言って、彼は穏やかに微笑む。
…この表情は、何を考えているのか本当に分からない。
太「…異能を使う許可を取ったそうだね」
「流石、耳が早いね」
太「数字の刻印は、できるようになったかい」
静かに息を吐いて、煙草を嗜む彼。
その所作全てが、美しい。
「…哀しいよね、異能と聞くと血が騒ぐ」
太「複写って体力を使うんじゃなかったかい?」
「最近訓練もしていないから特にね」
まあ探偵社にいれば確かに訓練をする機会も減るだろう。
…彼の前職?言えないよ、私からは。
「僕は僕で、今の平穏な暮らしが気に入っている。…はは、僕も弱くなったものだな」
そう言って、虚空を見つめる彼の目は、少し哀しげだった。
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ソジン(プロフ) - 主人公イケメンすぎなんですけどお!?!?!?!??!? (2016年12月12日 23時) (レス) id: e77b47a418 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠 - とても面白いです!何回も読み直してます!更新頑張って下さい!! (2016年12月1日 8時) (レス) id: 20c2c83a96 (このIDを非表示/違反報告)
神風うどん(プロフ) - もっとblっぽくできますか?お願いします! (2016年11月6日 11時) (レス) id: 8dca592e3a (このIDを非表示/違反報告)
キラ(プロフ) - とても面白いです。 (2016年11月3日 22時) (レス) id: 00dcb20401 (このIDを非表示/違反報告)
らいすぼーる(プロフ) - とても面白くてやばいですっ!!これからも応援してます!!! (2016年8月2日 20時) (レス) id: 5fceaeb50a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春海。・:+° | 作成日時:2016年7月17日 3時