【文スト】Petit morceau de la mémoire

cinq. ページ6

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- Fitzgerald side -









船の上。

装飾が施された小綺麗な部屋に、私はいる。



ただ、来た時と違うのは。






「…ん」

フィ「ああ、起こしてしまったかい」


「ううん…ここは…？」







言葉を失ってしまうほどに、美しい少年がいることだ。





ウェーブがかった、つややかな黒髪。


雪のように白い肌。

そして、恐ろしいほどに整った顔。






フィ「太平洋の上さ。」

「…ということは、船？」

フィ「その通り。アメリカに向かっているところだ」

「アメリカ？行ったことない」





ベッドで寝ていた彼を手招きして、ソファーの隣に座らせる。



身長は歳相応くらいだが、その体はずいぶんと痩せている。

…先ほど問いただしたところ、まともに食事を与えられていなかったらしい。





「…ねえ、こんな綺麗な服、本当にいいの？」

フィ「ああ。なかなか似合っているぞ」

「高かったよ？…僕なんかには勿体ないよ」





その言葉を遮るように、彼をこちらに凭れ掛けさせる。



風呂に入れさせ、服を見繕ってやった。

そのせいか、少し甘い香りがする。




「ねえ、僕の名前を呼んで？」

フィ「いくらでも呼んでやるさ。…A」

「…うん、」





痩せ細った華奢な身体は、触れれば折れてしまいそうだ。



私の肩に頭を乗せる彼の首筋に、顔を近づける。

くすぐったそうに、小さく声を洩らした彼は、…愛おしく見える。



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