檸檬と夜叉−7 ページ22
『ってて・・・流石にこの高さじゃ水もコンクリ並だな・・・背中絶対やったってこれ』
「・・・・・・・・・」
『っと・・・境花氏?大丈夫ですな』
「・・・・・・んで・・・」
『ん?』
「何で・・・助けたの・・・・・・」
『・・・目の前で死なれたら一生重いから』
首を傾げる境花の群青の目はもう濁っていなかった。中島とAの手によって磨かれたその原石は、微かだが光を取り戻していた。Aはその事実に酷く安堵した。
姿勢を正して、Aは話し始める。
___自己犠牲は確かに美しいよ。
でも、その自己犠牲で人を守った奴は、守られた側の気持ちなんて知らない。
だから、自分を犠牲に出来る。
だから、自分を傷付けることを厭わない。
守られた側はさ。
守った側の、最後に見た顔が死ぬまで頭から離れてくれないんだよ。べっとりこべりついて。
そいつはさ、"自分のせいで人一人を死なせてしまった"って思いながら一生生きてくの。辛いよ、思ってる以上にね。
逆に言えば、守った側は"人一人を救うことが出来た"って思うんですよ。
でも言い方を究極的に残酷にすれば"人一人の人生に一生こべりつく人間になった"ってこと。
ほら、最悪でしょ。
だから僕は、自己犠牲嫌い。
・・・海外の童話でさ、"人魚姫"ってお話があるのさ。
その人魚のお姫サマは人間に興味持って、海の魔女に少しだけ、尾ビレを足に変えてもらったの。
でも、その人間でいられる期間中に王子様から"愛"を貰わなきゃ、泡となって消えてしまう。お姫サマは飲んだよ、馬鹿なことに。
結果としてお姫サマは泡となって消えた。
二分の一の賭けに負けたんだ、お姫サマは。
何処がハッピーエンドなんだか。バッドエンドでしょこんな作品。
つまりさ、姫が泡となって消えてしまうなら、その賭けに乗った意味も何もかもが消える訳。
最後に皆でハッピーエンドを迎えられなきゃ意味無いってことだ。
そうして、Aは境花の頭を優しく撫でる。
『君も、幸せにならなきゃいけないんだ・・・』
どさっと音を立てて、境花の膝に倒れ込んだA。境花は自分に持論を聞かせた強い横顔から、その自分の膝で眠る彼女が、途端に脆いものに見えた。
泡となって消えた人魚姫のように。
境花の群青の目が、何を思っていたか?
想像に、お任せしましょう。
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響輝@ロングスリーパー(プロフ) - か、完結…!?!?更新お願いしたいです!!!あ、勿論無理ない程度で。。。外の作品も素敵です!頑張ってください! (2022年1月14日 21時) (レス) @page44 id: d6b5ec7764 (このIDを非表示/違反報告)
(´・ω・`) - 安心してください。。私もイデア氏にしか見えないです。(白目) (2021年12月27日 15時) (レス) @page36 id: 46b862f725 (このIDを非表示/違反報告)
怜 - 夢主ちゃんがイデアくんだとしか思えない私は末期() (2021年11月23日 13時) (レス) @page14 id: a2bd06fd1d (このIDを非表示/違反報告)
甘党 - 楽しみに待ってるので頑張ってください! (2021年10月25日 21時) (レス) @page44 id: 577366e2a2 (このIDを非表示/違反報告)
蓮蜜 - この作品は本当に面白いです!これからも頑張って下さい! (2021年10月23日 11時) (レス) id: a6fc2eacdc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Kaoru | 作成日時:2021年9月22日 23時