社畜してたら反社来た【佐野万次郎】

反社.11 ページ11

貴「でき、た…｣
小さく呟いて鏡の前でくるりと回る

変なところ、ないかな
何度も見直してから頷く

きっと大丈夫だ
今までに比べたら信じられないくらい綺麗

最後にお化粧したのはいつだっけ
入社してから1ヶ月くらいは頑張ってた気がするけど

それ以降は残業の量に疲弊して
お化粧する余裕なんて消え去ってしまった

万次郎さんにカードをいただいて
最初は意気込んでネットを見ていたけど

その値段に驚いてすぐサイトを閉じてしまった
あんなに働いていたのにお給料は少なくて

でもまぁ…家帰って寝るだけだったから
そこまで困ってはいなかったのかも

プチプラばかり見ていたら万次郎さんが来て
Aに似合いそう、こっちも、こっちも、って

沢山カートに入れて
あっという間に購入してしまった

そしてまた言ったの
「可愛いA、楽しみにしてる」って

真っ黒な瞳に私が反射してて
それはそれは間抜けな顔をしていた

ハゲたセクハラ野郎とか
シワのよったパワハラ野郎とか

そんな上司に囲まれていたから
万次郎さんみたいなイケメンに見つめられると

恥ずかしくなってしまう
今のままのボロボロの私じゃ捨てられてしまうかも

そう思ったら大学生の頃の記憶を呼び起こして
必死にメイクしていた

佐野「A？できた？」
貴「…っ、はいっ！｣

部屋の外から聞こえる万次郎さんの声に飛び上がる
佐野「入ってもいい？」

貴「……はい｣
彼には見えていないのにこくりと頷く

心臓が馬鹿みたいにうるさい
ドアノブがゆっくりと下がる

あぁ、どうしよう…
万次郎さんの顔、見れないかも…

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