十三話 ページ14
『さて、そろそろ姐さんが探偵社に捕らえられる頃かな』
黒岩はそう云いながらゆっくりと歩き進む。そして空き地の前を通りがかった時、立ち止まり呟いた。
『ねぇ、そこの君?』
ふと視線を下に向けるとそこには一匹の黒猫が居た。
猫はピクリと耳を動かし、黒猫もまたニコと微笑み返すかのように黒岩の方を見る。
『首輪が付いているね…飼い猫かい?』
黒岩は猫に付いている首輪を見ながら問いかける。
が、勿論返事は返ってこないわけで。
『君、凄く美人な猫だ…』
黒岩がそう云うと猫は目を細めながら鳴いた。
『探偵社の女医といい勝負だね……あっ、そうだ!』
黒岩はごそごそとポケットを漁り始める。
猫は不思議そうな目で其の様子を黙って見ていた。
『此れをあげよう』
そういって黒猫に差し出したのは金平糖の入った小瓶だった。
黒猫はそれを受け取ろうと前足を出したが、猫の力では蓋が開けられず困ってしまう。
そんな様子を見て黒岩は小さく笑いながら蓋を開けてあげた。
『はい、どうぞ』
黒猫は嬉しそうに金平糖を舐め始める。
黒岩はその猫の様子を微笑ましく思いながら見ていた。
『美味しそうで何より。それではね、』
そう云うと黒岩はまた歩き出した。
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作成日時:2023年11月6日 20時