十二話 ページ13
『……首領』
黒岩は珈琲カップを置き、森に声を掛ける。
森「何かな?」
黒岩は椅子から立ち上がり、森の前に立つ。
『……今回の件、芥川に指示を出したのは私です。』
森「……それで?」
『全て私の責任です。』
森「……けれど……君が指示をミスするなんてことはないと思うのだけど?」
『否、其れが意外に有るんですよ…』
森「うん、……それで?」
『首領は芥川をどうする御積りですか?』
森「まぁ…それ相応の罰は受けてもらうよね…?」
『……矢っ張りかぁ……、今回の任務、彼に指示を出したのは私です。任務失敗に置きましては、芥川の責任ではなく、上で指示していた上司である私の責任です。』
森「……」
『なので、…なので罰を下すなら私に下してください。』
黒岩は正座をし、床に頭を付けながら森にそう云った。
森「……頭を上げてくれ、Aくん」
黒岩はゆっくりと頭を上げ、森の目を見る。
森「…………君は優しすぎる。」
『……』
森「梶井君の時もそうだったよね。君は仲間の事を第一に考えている……最も、其れを表に出すことはしないけれど。」
『……』
森「……まぁ、君の其の思いに免じて今回は不問としよう。」
森はそう云いながら黒岩の頭を撫でた。
『……ありがとうございます』
森「いや、感謝しているのは私の方だ……君はよくやってくれている。」
黒岩は立ち上がり、部屋を出た。
樋口「……黒岩幹部……」
『おや?一葉ちゃん?』
部屋を出たはずの樋口が顔を出し、黒岩に声を掛けた。
樋口「あの、先刻の……失礼な発言、申し訳ありません!!」
『さっき?あぁ、気にしなくて良いよ。私が悪かったんだ。』
樋口「いえ!そんなこと……」
『……ふふ、一葉ちゃんは優しいね……』
黒岩はそう云って樋口に微笑む。
『そんな君に一つお願いがあるんだけど……』
樋口「……はい」
『此の事は誰にも云わないようにね』
樋口「……?」
不思議そうにする樋口に再度笑いかけながら黒岩は云う。
『此れでも私は幹部なんだ。幹部には幹部なりのプライドあると云う事だよ』
樋口「……承知しました」
黒岩は樋口が部屋に戻ったのを見届けると、少し嬉しそうにして呟いた。
『ふふ、君は素直でいい子だねぇ……』
そう云って黒岩は机の上にある資料を手に取った。
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作成日時:2023年11月6日 20時