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『……じゃあもう心配要らないみてェだな』
そうして椅子を引いて坂田は立ち上がり、いつの間にか空になっていたコーヒーカップを持つ。こちらを見ていたAを手招いて、自分の座っていたところに座らせた。
『青春、してんじゃん』
最後は明らかに俺へ向けてそう言い、軽く手を振って背を向ける。Aは何のことだか分かっておらず、ただ先生にお礼を伝えていた。
その姿が見えなくなった後、彼女はおずおずと言うように俺の方を向く。
向かい合うAに何か言おうと口を開くが、声が出ない。まだ残っている紅茶を飲んでも意味はないようで、喉が渇いているからという理由ではないみたいだ。
『……帰ろ?』
今はまだ何も話さなくていい。待ってるから……そう言いたげな微笑みを浮かべ、俺に手を差し伸べる。
その手を握ろうと手を伸ばすのだが、結局握れずに引っ込めてしまった。しかしAは悲しい顔は見せずにそれでも良いと頷く。
少し前を歩く彼女が自分を導き、自分が歩くべき路を教えてくれている気がするのだ。だから俺はその背中を見つめる。
余所見をしてしまえばAを見失ってしまうから。せめて真っ直ぐに前を見ていれば少しは上手に歩けるだろう。
いつか彼女の手を握って、隣を歩きたい。
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ハル(プロフ) - ゆうかさん» 過去作も読んでくださったんですか!! うわあ、とっても嬉しいです^^ これからもバンバン作品を作っていきたいと思っておりますので、また新作が出ましたらたくさん読んでいただけるととってもありがたいです! コメントと応援、どうもありがとうございました!! (2017年10月7日 13時) (レス) id: d8241361cf (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか(プロフ) - すっごく素敵なお話ばかりで1日で昔のものもほとんど読んでしまいました(;^ω^)これからも頑張ってください!応援してます! (2017年10月7日 11時) (レス) id: da24fb15e8 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 紫蘭さん» ありがとうございます! 最後は無事にハッピーエンドです!! ちょっと拗れた青春でしたが、紫蘭さんが楽しんでいただけたのなら良かったです。新作、完成させてからの投稿となっておりますので、お時間空いたときにでも読んでくださいませ! いつも閲覧どうもです!! (2017年10月6日 18時) (レス) id: 637325fbc5 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 銀皐月さん» ありがとうございます! 個人的にエロスが書きたいわけではないのですが、作品にそれっぽい表現が登場人物を表すために必要な時は薄っすら入れるようにしてます笑 高杉パパってわけじゃないけど、みてくださいな^^ コメントどうもありがとう。 (2017年10月6日 18時) (レス) id: 637325fbc5 (このIDを非表示/違反報告)
紫蘭(プロフ) - 完結おめでとうございます!皆幸せになる青春を謳歌しているなんて羨ましいです…笑 二人の思いが通じて良かったです! 新作頑張って下さい! (2017年9月30日 10時) (レス) id: 684ce788b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/harumemory
作成日時:2017年9月11日 18時