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カラカラと、音を立てながら窓を開ける。この部屋の主人はまだ帰ってきていないようで、「鍵を開けとくとは不用心だなあ」と思うが、勝手に侵入している自分も自分で似たようなモンだ。
部屋の中を夕陽だけが照らし、机も本棚も全て焼けるようなオレンジ色に染まっていた。
総悟の姿は部屋になくて、きっとまだ帰ってきていないのだろう。坂田先生に呼ばれていたのは、恐らくきっともう後がないと言う話。
それを聞いた彼は、喧嘩をやめてくれるのか。……いや、きっとやめない。そこまで分かっているのに、私は総悟のために何もできないのだった。
床に膝を抱えこむように座っていた私だが、彼のベッドの傍による。掛け布団を握りしめ、顔を埋めれば鼻いっぱいに総悟の匂いを感じた。
変態すぎて失笑が漏れる上に、こんなところ総悟に見つかったら本当に嫌われてしまう。……これ以上嫌われたら、口も聞いてくれなさそうだ。
でも匂いを感じているこの時だけは総悟が傍にいてくれている気がして、だからやめられない。前はいつでも触れ合えるくらい近くにいたのに、今はこんなにも遠かった。
もう幼馴染みではないのかもしれない。もしそうだとしたら、私たちは戻れないのだろうか。
彼に言いたいことがたくさんあるのに、言わなきゃいけないことがあるのに……そのどれもが言えずに喉の奥、胸の底に沈んでいる。
『総悟……』
名前を呼んだら、「なに?」と振り向いて微笑んでくれる彼は何処へ行ってしまったのか。もう戻って来ないのか。
私の彼を呼ぶ声は聞こえていなくて、聞こえないフリをされていて……。せめて今は、この総悟の匂いのする布団だけが私の救いのようになっていた。
それを握りしめていれば、次第に瞼は重たくなって落ちていく。
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ハル(プロフ) - ゆうかさん» 過去作も読んでくださったんですか!! うわあ、とっても嬉しいです^^ これからもバンバン作品を作っていきたいと思っておりますので、また新作が出ましたらたくさん読んでいただけるととってもありがたいです! コメントと応援、どうもありがとうございました!! (2017年10月7日 13時) (レス) id: d8241361cf (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか(プロフ) - すっごく素敵なお話ばかりで1日で昔のものもほとんど読んでしまいました(;^ω^)これからも頑張ってください!応援してます! (2017年10月7日 11時) (レス) id: da24fb15e8 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 紫蘭さん» ありがとうございます! 最後は無事にハッピーエンドです!! ちょっと拗れた青春でしたが、紫蘭さんが楽しんでいただけたのなら良かったです。新作、完成させてからの投稿となっておりますので、お時間空いたときにでも読んでくださいませ! いつも閲覧どうもです!! (2017年10月6日 18時) (レス) id: 637325fbc5 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - 銀皐月さん» ありがとうございます! 個人的にエロスが書きたいわけではないのですが、作品にそれっぽい表現が登場人物を表すために必要な時は薄っすら入れるようにしてます笑 高杉パパってわけじゃないけど、みてくださいな^^ コメントどうもありがとう。 (2017年10月6日 18時) (レス) id: 637325fbc5 (このIDを非表示/違反報告)
紫蘭(プロフ) - 完結おめでとうございます!皆幸せになる青春を謳歌しているなんて羨ましいです…笑 二人の思いが通じて良かったです! 新作頑張って下さい! (2017年9月30日 10時) (レス) id: 684ce788b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/harumemory
作成日時:2017年9月11日 18時