アネモネの花をあなたにpart4 (ページ5)

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自由ページ5

その日の夜、お店の方で売上金を計算しているニノにこっそり後ろから近づいた。

「ニ〜ノ〜。」

名前を呼びつつ、後ろから抱きついた。

ニノは俺の行動に動じず、会計を続ける。

「なに？智から来るなんて珍しいね。」

「んふふ。そーかな？」

ゆっくりと時間が流れる。

俺はニノの背中にピタって耳をくっつける。

トクン…トクン…って、規則正しく脈を打つ鼓動。

安心するのと同時に胸が痛くなる。

「ねえ、ニノ。」

「ん？」

「俺がパリに行ったら…寂しい？」

ずっと動いていたニノの手が止まった。

そして、抱きつく俺の腕をそっと剥がして、顔をむかいあわせにして座る。

俺の手をぎゅって握って、一言一言を大事にしながらニノは話してくれた。

俺へのありったけの思いを。

「智、あなたがいなくなったらそりゃすごく寂しいよ。けどね、それ以上に凄く嬉しいんだ。
智はもう、外に目を向けられるほど前を向いてるってことだもん。
智は自由だよ。俺の気持ちなんか聞かなくたっていいんだよ？」

そう言って、あまりにも嬉しそうにニノが笑うから、俺も一緒に笑うしかなかった。