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『一ノ瀬屋ねェ……』
『俺たち芋侍にゃ、縁のない店ですねィ』
栗毛の男は焼け爛れてボロボロの屋敷を見ては一笑を漏らす。それに隣にいる黒髪の男は何も言わずに、空から零れ落ちて来た雨粒を見上げた。
『火を消し終わった後に雨とは、ついてねェや』
「彼奴も」と、布に包まれた男の死体に目を向ける。しかし空には青空が見えているため、不意に神様が零した通り雨のようだ。
栗毛の男、沖田は隣にいる黒髪の男、土方に煙草の消し忘れで自分たちの住む真選組を燃やすなよ、と言っては既に吸っている煙草を睨む。
土方は眉をひそめ、地面に落としては靴底で踏み潰した。
『……んで、ここに住んでたらしい娘はどこへ行ったんだ』
実家が火事になったことを知らせないといけないのだが、彼らは彼女、Aの居場所を知らない。
面倒臭いことに巻き込まれたことに溜め息を吐く沖田は、「どこに嫁に行っちまったんですかねィ」と狐の嫁入りと掛けて呟く。
『どこだと思いやすか?』
……そう、沖田から少し離れたところで燃え残った一ノ瀬屋を見つめている一人の人物に声をかけた。
その男はゆっくりと沖田の方へ目線を移し、「さあ?」と首を傾げる。
『いやあ、驚きましたよ!
まさか佐々木殿の御用達のお店がこちらだったとはね!』
そうして男、佐々木異三郎に近づくのは沖田と土方の上司である近藤だ。彼らを一瞥した佐々木は、また一ノ瀬屋に目線を送った。
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まい - 999本の薔薇は「何度生まれ変わってもあなたを愛す」ですね。感動しました。 (2020年5月12日 20時) (レス) id: 7154107f34 (このIDを非表示/違反報告)
ユウ - 完結おめでとうございます。まさか、「おかえり、愛おしい人よ」シリーズと繋がっていたのだとは知りませんでした。そして感動し、鳥肌が立ちました。素晴らしい作品です! (2019年11月12日 18時) (レス) id: 7837a845b7 (このIDを非表示/違反報告)
莉緒奈(プロフ) - すごい感動しました!涙が止まらなかったです!本当におもしろくて、最高でした! (2019年2月9日 22時) (レス) id: 128bb1ac1a (このIDを非表示/違反報告)
ハル(6/17)(プロフ) - モモさん» 閲覧とコメントをどうもありがとうございます^^ 沖田もいいキャラですけど高杉も捨てがたいですよね〜〜〜!! そう言ってもらえてとても嬉しいです!! ありがとうございました( ´ ∀`) (2018年4月27日 14時) (レス) id: 0297264441 (このIDを非表示/違反報告)
モモ - 今回の作品もとても面白かったです!思わず涙ぐんでしまいました(笑)サドリーマンも好きだけど、特に高杉さんの作品が大好きです!私もどちらかと言うと高杉好きなのでwとても素晴らしい作品をありがとうございました!!! (2018年3月18日 20時) (レス) id: a467930736 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/harumemory
作成日時:2017年8月24日 11時