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家を飛び出したは良いものの、当てもなく私は歩き続けていた。晋助さんの姿は何処にもなくて、途方にくれてしまう。
まだ叔父の語った真実が胸の中で渦巻いており、悪い夢を見ているようだ。
角を曲がった私だが、その瞬間に何かとぶつかる。痛む鼻先を抑えながらぶつかったものを見上げれば、それは強面で大柄な男だった。
先日襲われた記憶を思い出してしまい、足がすくむ。謝ろうと口を開けるも声が出ない。ただ掠れた息だけが唇の隙間から漏れ出していく。
『痛ってェなァおい』
「折れちゃったよ」と、骨折したと言っている足を楽々と持ち上げていた。「嘘でしょう」なんて強気なことは言えずに、「ごめんなさい」と蚊の鳴くような声を必死に絞り出す。
『聞こえねーよ』
そう言って私と距離を縮めようとしたのだが後ろから私の腕が掴まれ、そこへ引き寄せられてしまう。
背中には暖かさが伝わり、顔を上げれば私の夫で現状の救世主でもある晋助さんがいた。
『勘弁してくれねェか?
悪気があったわけじゃないんだろう?』
そう私を見つめる隻眼に何度も小さく頷き、晋助さんに縋り付く。突如、背中に汗が伝うようなピリピリとした空気になった。
ゾクゾクして、寒くて……これはなんだろうかと考えていれば、ぶつかってしまった男はそそくさと逃げる。
晋助さんが何をしたのか分からないが、今はそんな考えたって分からないことに頭を使っても無駄だ。
安堵した直後に思い出して溢れるのは、先ほどの叔父の発言と堰き止められない涙である。
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まい - 999本の薔薇は「何度生まれ変わってもあなたを愛す」ですね。感動しました。 (2020年5月12日 20時) (レス) id: 7154107f34 (このIDを非表示/違反報告)
ユウ - 完結おめでとうございます。まさか、「おかえり、愛おしい人よ」シリーズと繋がっていたのだとは知りませんでした。そして感動し、鳥肌が立ちました。素晴らしい作品です! (2019年11月12日 18時) (レス) id: 7837a845b7 (このIDを非表示/違反報告)
莉緒奈(プロフ) - すごい感動しました!涙が止まらなかったです!本当におもしろくて、最高でした! (2019年2月9日 22時) (レス) id: 128bb1ac1a (このIDを非表示/違反報告)
ハル(6/17)(プロフ) - モモさん» 閲覧とコメントをどうもありがとうございます^^ 沖田もいいキャラですけど高杉も捨てがたいですよね〜〜〜!! そう言ってもらえてとても嬉しいです!! ありがとうございました( ´ ∀`) (2018年4月27日 14時) (レス) id: 0297264441 (このIDを非表示/違反報告)
モモ - 今回の作品もとても面白かったです!思わず涙ぐんでしまいました(笑)サドリーマンも好きだけど、特に高杉さんの作品が大好きです!私もどちらかと言うと高杉好きなのでwとても素晴らしい作品をありがとうございました!!! (2018年3月18日 20時) (レス) id: a467930736 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/harumemory
作成日時:2017年8月24日 11時