【銀魂】夢は、青い薔薇のようだ

番外篇 「愛しています」 ページ45

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『――では、腕を広げてください』



そう言って腕を広げてくれた彼、晋助さんの前でメジャーを伸ばす。彼の腰回りの長さを測ろうとしたが、畳に滑ってそのまま彼の腹に激突した。



『随分と大胆な測り方だなァ』

『……すみません』



痛む鼻をさすりながら身体を起こし、再開しようと試みるも晋助さんが私を見下ろしていることに気付く。そうして彼は手を伸ばして、私の鼻を指先でさする。



『赤くなってるな』

『直ぐに引きますよ』



やけに心配性な彼に小さく笑えば、私の頭を押さえつけるように撫で回された。ほんの少しだけ乱暴な手つきのせいで余計に笑いを誘われ、頭の上に乗っかる晋助さんの手を握りしめる。


その手を元の位置へと戻し、計測を再開した。



『でも本当に私が作った羽織でいいんですか？』



晋助さんならもっと上等な物が買えるはずだ。しかし彼は「お前のが良い」の一点張りで、嬉しいけれどもどこかくすぐったい。



『晋助さんの羽織を折るのは、これで二回目ですね』

『……あァ』



ワンテンポ遅れた返事。どうしたのかと彼を見上げるも、何ともなかったかのように視線を外されてしまう。晋助さんの気に触ることを言ったかと記憶を辿るが、特に思いつかなかった。


そうして私は彼にどんな柄が良いか、色合いが良いのか聞くも「任せる」とだけ。それはそれで困るため、何か一つでも要望を与えてほしいと彼に頼んだ。



『なら、桔梗の柄模様の羽織がいい』

『桔梗ですか？ それなら昔に折ったことがあるので……』



はっと、勢いよく顔を上げる。惚けた私の顔を彼は面白そうに喉奥を鳴らしながら見つめ、頬に手を添えた。そうして顎をすくい、触れるだけのキスを落とす。



『あれは晋助さんへ渡ったんですね』



父に誰に渡したのかは聞かなかったが、こんな巡り合わせがあったとは。


少し嬉しくなるのと同時に、お互いのことを何も知らない間柄で私の折った羽織を私のことを知らない人が着て、私の知らない人が着ていたのだ。その人の趣味も何も考えずに折ってしまった羽織だが、きっと彼なら今でも大切にしてくれているのだろう。



『晋助さん、次は菊の柄模様なんてどうです？』






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唐突に書きたくなりました。
このシリーズは本当に書いて良かったです。
また機会があれば高杉の長編に挑戦してみたい……

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