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ゆっくりと目を開けるが、あまり見慣れない天井。重たい身体を起こし、辺りを見回せば私が今いるのは船の中の自室だった。
窓の外には暗い空にポツポツと光る星があって、まださほど自分が気を失った時から時間が経っていないことが分かる。
首に痛みを感じたことから考えると、おそらく晋助さんが私を止めたのだろう。どうして止めたのか、その理由は悩まなくても見当がついていた。
私の手を汚させないため。だから彼は私を人殺しから引き離したんだ。
『……目ェ、覚めたのか』
開いた襖。そこから入る彼はどこか満足そうな笑みを浮かべており、もう私が行おうとしていたことは無になってしまったことが分かる。
汚させまい、汚れたところを見せまいとする彼の私を甘やかすそのエゴを、私は喜ぶべきなのだろうか。
ゆっくりと私との距離を縮める晋助さんは懐から一枚の紙を取り出す。それを広げ、私に手渡した。
彼から受け取った紙切れには血が滲んでおり、一番上には一ノ瀬屋の権利書という意味の文字が書かれている。
『一ノ瀬屋の所有者はお前だ』
その時、私はこんな紙切れ一枚で領主になれるのかと苦笑が漏れてしまう。同時に叔父はこんな紙切れごときのために私の父親、自分自身と血の繋がった兄弟を殺したのだ。
なんて浅はかでバカな男なのだろうと、もうこの世にいない彼を胸の内で嘲笑った
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まい - 999本の薔薇は「何度生まれ変わってもあなたを愛す」ですね。感動しました。 (2020年5月12日 20時) (レス) id: 7154107f34 (このIDを非表示/違反報告)
ユウ - 完結おめでとうございます。まさか、「おかえり、愛おしい人よ」シリーズと繋がっていたのだとは知りませんでした。そして感動し、鳥肌が立ちました。素晴らしい作品です! (2019年11月12日 18時) (レス) id: 7837a845b7 (このIDを非表示/違反報告)
莉緒奈(プロフ) - すごい感動しました!涙が止まらなかったです!本当におもしろくて、最高でした! (2019年2月9日 22時) (レス) id: 128bb1ac1a (このIDを非表示/違反報告)
ハル(6/17)(プロフ) - モモさん» 閲覧とコメントをどうもありがとうございます^^ 沖田もいいキャラですけど高杉も捨てがたいですよね〜〜〜!! そう言ってもらえてとても嬉しいです!! ありがとうございました( ´ ∀`) (2018年4月27日 14時) (レス) id: 0297264441 (このIDを非表示/違反報告)
モモ - 今回の作品もとても面白かったです!思わず涙ぐんでしまいました(笑)サドリーマンも好きだけど、特に高杉さんの作品が大好きです!私もどちらかと言うと高杉好きなのでwとても素晴らしい作品をありがとうございました!!! (2018年3月18日 20時) (レス) id: a467930736 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/harumemory
作成日時:2017年8月24日 11時