Never-ending blue【シリウス・ブラック】 (ページ1)

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青いページ1

今ではセピアに色落ちしてしまった情景、それをふと思い出したのは三年生になる夏のことだった。ホグワーツ中庭の湖沿いに腰掛けていると、嫌でも目に入る鮮やかな青。人工的に作ったような、何処か安っぽい空色。雲ひとつ無いものだから、誰かがバケツ一杯のペンキを誤ってぶちまけてしまったかのような。何となく虫酸が走る色だった。多分、自分が愛していた青色とはかけ離れていたからだ。

◇

夏の日射しが眩しいグリモールド・プレイス十二番地。六歳の誕生日を迎えたシリウスは、屋敷の裏道を走っていた。美しく舗装された石畳を蹴り上げ、目的地へと向かう。待ち合わせ場所の公園が見えてくると、思わず緩む口角を必死で引き締め、さらに加速した。近づくにつれ、長い絹のような髪が脳裏に浮かんでくる。そして、足を止める。

『シリウス、上手く抜け出せた？』
『当たり前だろ』
『さすが、ブラック家長男さん』

ベンチに座り、ひらひらと手を振る幼馴染セラフィーナの隣に腰掛ける。友人が約束通り来ただけなのに、とても楽しそうに目を薄める彼女の瞳は、淡く美しい青で、輝いていた。

ある日、シリウスの耳にある噂が流れてきた。セラフィーナが、両親の喧嘩に巻き込まれ、入院していると言う内容だ。あまり信じていなかったが、少し気になったので彼女の家に寄ってみると、妙にしんみりとしていた。窓によじ登り、中の様子を見てみると、人影は一切無く、代わりに綺麗だったはずの部屋には、荒れた跡が残っていた。嫌な予感がしたシリウスは、母親に事情を話し、何とか聖マンゴに連絡をして貰い、冷や汗を拭う。しかし母親が紡いだ言葉は、彼を絶望に陥れた。

セラフィーナの病室に入ると、そこには癒師と彼女しか居なかった。もとい現在の、彼女だ。胸元で揺れる髪も、愛想の良い笑顔も、大好きな青の瞳も変わっていない。けれどその青はもう、"仲良しで幼馴染のシリウス"を映していなかった。彼女の記憶から、シリウスは切り捨てられてしまったのだ。

皮肉なことに、その日の空は憎らしい程の晴天だった。

◇

「シリウス、空なんか見詰めてどうしたんだい？夏休みの間で、ロマンチストになってしまったのか？」
「何でもねえよ、ジェームズ」

今日の空も、青い。