義理の兄は医者でした3 (ページ36)

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お昼を終え午後はソヒさんのリハビリに付き添う予定。

ソヒさんと車椅子を押しながら廊下を歩く。最近再手術をしたソヒさんは、手術前2ヶ月からベッド上で安静だったため大分歩行機能が弱っている。

今は手すりと一緒に5メートル歩行の段階だ。

SH「もう嫌になっちゃうよね。これでも前は体育の先生とかやってたのに今となっては立つのも一苦労よ。」

そういえば部屋に生徒のものからであろう色紙を飾ってあったのを思い出した。

自嘲的な笑みを浮かべそんなことをいうソヒさん。いつも車椅子に移乗する度に悔しそうな表情をするので、私はなんと言ったらいいのか迷ってしまう。

今回もなんとなくへらりと笑う。

『…一緒に頑張りましょうね。』

自分の言葉がすごく薄っぺらく聞こえて嫌になった。

リハビリルームでは担当の理学療法士さんがいらっしゃるので実はあまりやることはない。

声掛けをしたり邪魔にならない程度に手を貸したりするぐらいだ。

それでも何もやることがない中ナースステーションで気まずい時間を過ごすより全然マシなんだけれど。

ふと周りを見回すとジミンもちょうど同じ時間にリハビリに来ていたようで目があう。小さく手を振ると軽く微笑んでくれた。

ジミンと担当の患者さんは歳が近いこともあるのかだいぶ打ち解けて上手にやっているのが見受けられる。

ジミンだったらこんな時ソヒさんになんて声をかけるんだろうな。きっと私よりずっと上手い言葉を選ぶんだろうな。

自分にはない落ち着きと優しさを持ったジミンが羨ましい。

「学生さーん！ちょっと手伝ってくれる？」

ソヒさんと一緒に歩行練習をしている理学療法士さんに呼ばれ、急いでそっちに向かう。

「ソヒさん、ゆっくりで大丈夫ですよ。焦らないで。」

SH「すみません…なんか急に…」

どうやらオーバーペースで、体に力が入らなくなってしまったようだ。

車椅子をすぐに用意してソヒさんを座らせる。

『気分の方はどうですか？苦しかったりしませんか？』

SH「はい、ただ足の力が抜けてしまっただけで。お騒がせしてすみません。」

またソヒさんのあの悔しそうな顔を見てもどかしい気持ちになった。

きっと何も考えずにできていたことが、今はできないってすごく歯痒いんだろうなぁ。

今日はリハビリを早めに切り上げることになったソヒさんの車椅子を押しながらそんなことを考えた。

無言で歩く廊下はいつもより長く感じられた。