264.君が側にいないこと。 蒙恬side ページ25
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「信、Aちゃんは?」
「……Aは居なくなった…。」
「え…、」
目的地の東金城に飛信隊が到着したと聞き、Aちゃんに会いに来た俺は、信の言葉に手に持っていた酒をその場に落としてしまった。
「ど、どういう事だ!?居なくなったって!信、Aちゃんと一緒に居たんだろ!?」
「いたけど…。」
「だったら、どうして…!」
「クソッ、俺だってわかんねェ!!アイツが何か悩んでいるって言うなら、何で俺に打ち明けてくれねェんだ!俺はそんなに頼りないのかよ!」
信の苛立ち、俺と同じようにAちゃんの事を心配している事はわかっていても、怒りの矛先は側にいる信へと向かう。
「何で目を離したりしたんだ!彼女に何かあったら、信お前のせいだからな!!」
信の胸ぐらを掴んだ俺は、怒りのまま殴りつけてしまいそうで、抑えろと自分に必死に言い聞かせた。
「Aは自分の意志で出て行った。側にいたのに、俺には一言も言わずに…。貂には必ず帰ってくるからって告げて…。」
「信に言えば引き留められると思ったからだ。彼女がここを出ていかなければならない理由。信、何か思い当たる事は?」
「考えられるなら、李牧ってヤロウだ」
「李牧…?趙の宰相がなぜ?」
数日前の出来事を信は俺に話してくれた。
東金城を目指す道中で、韓に襲われていた徐という国を救い、お礼の品としてこの辺一帯の地図をもらったこと。その地図に記されたモノは精巧で、一部の者達しか知らない抜け道も記されていた。その抜け道での李牧との出会い。
「伝令の合図で敵が近くにいるってわかって、それを確かめに言ったら、」
「李牧がいたという訳か。人目を忍んで山深い場所での密会…相手の男は?」
「見たことねェ奴だった」
「そうか…。秦趙同盟が結ばれたからと、俺達は油断していたのかもな。秦を狙う国は趙だけではない。それに、きっかけ一つで同盟など脆く崩れてしまう。李牧が裏で何か企てようとしているのかもしれない」
「じゃあ、Aは李牧に!?」
「ない…とは言えない。彼女の心に付け入り、敵側へと招きいれたのなら……。」
李牧もAちゃんに魅了された一人。
彼女に危害を加える事はないとわかっていても、喉から手が出るほどAちゃんを欲しいはず。そんな男の元にいる君の事が、俺は心配で堪らなかった。
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S - 初コメ失礼します!キングダムにハマって昨日この小説を一から読んだんですがほんとに号泣で最高です!これからもがんばってください (3月31日 13時) (レス) @page50 id: 458c8fefa1 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - 綿菓子さん» コメントありがとうございます。確かに、自分でも早いと思ってます笑。引き続き読んでいただけたら、嬉しいです。ありがとうございますね。 (2020年6月12日 19時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
綿菓子 - 最近は更新スピードがとても速いので嬉しいです!唯一無二の花嫁。7も必ず読みます♪無理せず更新頑張ってください(^^) (2020年6月11日 19時) (レス) id: 80159fc2f2 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - 海さん» ありがとうございます。私も、読者様がこの作品を読んでくれることと、コメントをもらえることが原動力になってます。更新頑張ります! (2020年6月8日 5時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - ゆうあさん» はい、宜しくお願いします!こちらこそ読んでいただき、ありがとうございます。頑張りますね! (2020年6月8日 5時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:bluemoon | 作成日時:2019年12月30日 16時