254.次から次へと。 信side ページ15
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銅鑼やら矢を撃ち込んでくるやら、これが三日も続けばいい加減腹も立つもの。分かりやすい挑発だって事はわかってる。
わかってんだが…。
「信、今は耐えて」
「心配すんな。お前を危険な目に遭わせたりしねぇよ」
俺の腕を掴み止めるAの表情は不安そうで、その不安を消すように頭をポンポンと叩き笑って見せれば、Aも少しだけ微笑んだ。
飛信隊として俺がしっかりしねぇと。前のように後先考えず突っ込んでいっちまったら、隊としての機能が失われ隊員の命を危険にさらすことになる。
だから俺が……。
「我慢ですよ信殿」
「あんな挑発乗る方がどうかしてる」
「渕さんも貂も心配し過ぎだって。いちいち俺がガキの挑発なんかに――」
崖下から聞こえる声や言葉は俺を煽るには十分だった。「腰抜け」「タマ無し」幼稚な単語の応酬。隣にいるAは恥ずかしそうに顔を赤くしていて。
ったく、こっちはがさつな男連中だけじゃねぇってのに。
「信?」
「……ちょっと小便に行ってくら」
立ち上がった俺を不審に感じたAも立ち上がるもんだから、もうこの際道ずれだ。怒りに小刻みに震える俺の体を見たAはまさかって顔。
「信待って―――」
Aの呼び止める声を振り切り、崖下目指して飛び出した。
標的は馬に乗り背を向けていた。余裕そうな態度に、ソイツの後頭部に剣を振り下ろす。
俺の強襲に気づいた兵が「項翼」と名を呼んだが、時既に遅し。確実に首をとれると思っていた。俺に背を向けている時点で、剣を抜くスピードに若干の遅れが生じる。有利なのは俺の方。
だが、ソイツの発した言葉は俺を驚愕させた。
「ってェな、てめェ」
コイツ…物凄い速さで抜刀し、俺の剣を後ろ向きで止めやがった。名だたる将を葬ってきた俺の一撃をこうもあっさり止めるとは、コイツ何者だ。
睨み合うこと数秒。
俺を助ける為に隊員が崖をおりて来る音が聞こえる。その中に俺の名前を呼ぶAの声も聞こえて、これは後でメチャクチャ怒られるパターンだ。止められたにも関わらず身勝手な行動。
「お前が隊長、飛信隊の信か!?」
今までの活躍もあってか、飛信隊の隊長として名は知られているようだ。
「そんな事はどうでもいいけどよ。てめェAの知り合いか?」
「答える義理はねぇ」
「んじゃいいや。てめェぶっ叩いて無理にでも吐かせてやるから」
まだ、Aと関わりのある奴がいるとか、聞いてねぇての。
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S - 初コメ失礼します!キングダムにハマって昨日この小説を一から読んだんですがほんとに号泣で最高です!これからもがんばってください (3月31日 13時) (レス) @page50 id: 458c8fefa1 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - 綿菓子さん» コメントありがとうございます。確かに、自分でも早いと思ってます笑。引き続き読んでいただけたら、嬉しいです。ありがとうございますね。 (2020年6月12日 19時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
綿菓子 - 最近は更新スピードがとても速いので嬉しいです!唯一無二の花嫁。7も必ず読みます♪無理せず更新頑張ってください(^^) (2020年6月11日 19時) (レス) id: 80159fc2f2 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - 海さん» ありがとうございます。私も、読者様がこの作品を読んでくれることと、コメントをもらえることが原動力になってます。更新頑張ります! (2020年6月8日 5時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - ゆうあさん» はい、宜しくお願いします!こちらこそ読んでいただき、ありがとうございます。頑張りますね! (2020年6月8日 5時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:bluemoon | 作成日時:2019年12月30日 16時