曖昧な関係。1 李牧×姜燕 (凌様リク) ページ38
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久しぶりに会った彼女は、大人の色香を纏った綺麗な女性になっていた。容姿は勿論、体つきも女性特有の柔らかみがあって。
「姜燕様、御部屋の用意ができました」
「ああ。貴殿も長旅で疲れているだろう?今日は泊まっていくといい」
「気遣い有難うございます。姜燕殿、そちらにいる女性は?」
「彼女は私の弟子だ。名をAという」
私の視線に気づいた彼女は一礼し、直ぐに視線を姜燕に向けた。
名前など、聞かされなくとも知っている。どんな声で、どんな口調で話すのか。彼女の事なら、姜燕よりも私の方が詳しい。
なぜなら彼女と私は―――。
「そろそろ部屋に戻るか」
「姜燕様…今日は…。」
「わかっている。少し用があるため席を外すが、後でお前の部屋に寄ろう」
姜燕は彼女の髪を撫で、優しい笑みを浮かべる。見つめあう感じはただの弟子の関係だけではないと、それを隣で見ていた私の直感。握りしめた盃が音を立て、このまま掌の中で割れてしまいそうな程に、胸に渦巻く嫉妬。
「昔の馴染みである私への挨拶は、無しですか?」
「………なぜ、ここに?」
「宰相である私には色々とやる事があるんですよ。故郷を捨て、恋人でもあった私を捨てた貴女に…まさかこんな所で出会うとは」
「"元"恋人だから…。私、用があるからもう行く」
部屋を出て行った姜燕を追いかけるように、扉に手をかけた彼女を後ろから抱き締めた。私の行動に、私の腕の中にいるAの体が強ばっても気にすることなく、首元へと唇を寄せ吸い付く。
「――っ、止めて…っ…!」
「この肌の感触、香りもあの頃のまま。何度も私と交わった貴女を、片時も忘れたことはなかった。突然いなくなった貴女を探して、貴女に似た女性がいると聞けば昼夜を問わず駆け回り…。違うと分かれば酷い虚無感に襲われ、より一層貴女への思いを募らせる」
「お願いだから…私の事は忘れて…。」
開いた扉を行かせないと閉め、彼女の体を抱き上げた。後ろ手に鍵をかける私に、Aは観念したのか抵抗はしない。
何処か諦めたような表情。
私を見つめる目が、知らない女のようで無性に腹が立った。
「嫌いになった…訳ではないんですよね?何か理由があって、」
「理由なんかない…。私が李牧の元を離れたのは、私の意志。貴方に気持ちはあっても、私には気持ちはなかった」
「嘘を吐くときの貴女の癖。私は忘れていません」
貴女の事は全て、何もかも忘れた事はない。
そう、些細な癖に至るまで。
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bluemoon(プロフ) - りんさん» はじめまして。返信遅くなり申し訳ありません。私なりの解釈で慶舎を書かせてもらいましたが、お話しを気にいってもらえたのなら嬉しいです。番外編にも登場させたいと思っています。主人公と幸せになってもらいたいので。こちらこそコメントありがとうございました。 (2020年9月4日 22時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
りん - はじめまして。感謝をお伝えしたく書きこみします。キングダムにはまったばかりでしたが、bluemoonさんの小説でキングダムをさらに楽しむことができました!私は慶舎が好きなのですがbluemoonさんの書く慶舎がとても好きです。素敵な小説本当にありがとうございました! (2020年8月21日 13時) (レス) id: 1e1ceb0c12 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - ちぃさん» コメントありがとうございます。こちらこそ、ちぃさんにはリクエストもいただいて、楽しくお話しを書く事ができました。取り敢えず完結と言うことで。また短編が書きたくなったら考えてみようかなと思います。まだ、出してないキャラも沢山いますから笑 (2020年8月13日 9時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ(プロフ) - 短編おつかれさまでした!どのキャラの話もドキドキして恋しちゃうような素敵な作品ばかりでした!bluemoonさんの作品、本当に大好きです!引き続き本編も楽しみにしています!が!暑い日が続いていますのでご無理なさらず、お体ご自愛くださいね(^^) (2020年8月13日 8時) (レス) id: fe5c27facf (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - 猫猫さん» コメントありがとうございます。ですが、この短編は完結となっておりますので、以後リクエストを受け付ける事をしないつもりです。答えられず申し訳ありませんが、ご了承ください。お話しを読んでいただきありがとうございました。 (2020年8月12日 23時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:bluemoon | 作成日時:2019年11月19日 11時