彼女の流した涙の訳。1 呉鳳明 (葵咲様、いぶ様リク) ページ26
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どうやって誘い出せばいいものか…。
一度強引に連れて行こうとしたがAに泣かれ、それ以来会うことが出来なかった。威圧的な俺の態度に、ただ二人きりで話がしたかっただけだと伝えられず。
Aがいるであろう天幕前を行ったり来たり。
「鳳明殿、どうかされたのですか?」
「いや、別に…。」
「そうですか。では、私はAに用事があるので失礼します」
Aがいる天幕を通りすぎる李牧。歩いて行く方向には一際デカイ天幕があり……そこを李牧が使っているのを知っている。
だが、奴は今はなんと言った?
Aに用があり、それでいて自分の天幕に戻ろうとする。
「一つ尋ねたいことが…。」
「何です?」
歩みを止めた李牧が、俺の方へと体を向けた。
引き留めたものの、直接尋ねてもいいものだろうか。今は作戦の都合で同じ敵を前に共闘している仲間だが、この作戦が終われば俺とAは敵同士の関係。
もう、会うことはないかもしれない。
「Aに用があるんじゃないんですか?」
「なぜ、それを…。」
「答えは至極簡単。Aの天幕前を彷徨き、策を練っている間も私の傍らにいるAに視線を注ぎ。前に一度Aの返事も聞かず何処かに連れて行こうとしたことも、私は忘れていませんよ」
「ならば、あの時Aが泣いた事も見ていたはず。俺は泣かれる程に嫌われているんだろうか…。話がしたかっただけなのに、上手く伝える事も出来ず」
「そう彼女に伝えればいいのでは?自分の思った事を自分の言葉で」
「だから俺はAに嫌われていると――」
「そんな事ないですよね、A?貴女も鳳明殿と話がしたいと私に相談してきたんですから」
「り、李牧様!それは言わない約束じゃ…!」
居ないと思っていた天幕内に、Aはいた。真っ赤な顔をして、李牧に詰め寄る姿に。もしかしてこれは俺が嵌められたのか?居ないと思わせ、俺の真意を確かめるために。
「フッ、まんまと俺がお前にしてやられた訳だ」
「鳳明さん…。」
「すまなかった。お前に対しての無礼を許してくれ」
「頭を上げて下さい!私の方こそその…、」
「全ては俺の言葉足らずが原因。だから改めてお前を誘わせてくれ。Aと二人きりで話がしたい。俺の誘い受けてくれるか?」
差し出した俺の手を見つめたAは、やや間があってそっと手を握り返した。
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bluemoon(プロフ) - りんさん» はじめまして。返信遅くなり申し訳ありません。私なりの解釈で慶舎を書かせてもらいましたが、お話しを気にいってもらえたのなら嬉しいです。番外編にも登場させたいと思っています。主人公と幸せになってもらいたいので。こちらこそコメントありがとうございました。 (2020年9月4日 22時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
りん - はじめまして。感謝をお伝えしたく書きこみします。キングダムにはまったばかりでしたが、bluemoonさんの小説でキングダムをさらに楽しむことができました!私は慶舎が好きなのですがbluemoonさんの書く慶舎がとても好きです。素敵な小説本当にありがとうございました! (2020年8月21日 13時) (レス) id: 1e1ceb0c12 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - ちぃさん» コメントありがとうございます。こちらこそ、ちぃさんにはリクエストもいただいて、楽しくお話しを書く事ができました。取り敢えず完結と言うことで。また短編が書きたくなったら考えてみようかなと思います。まだ、出してないキャラも沢山いますから笑 (2020年8月13日 9時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ(プロフ) - 短編おつかれさまでした!どのキャラの話もドキドキして恋しちゃうような素敵な作品ばかりでした!bluemoonさんの作品、本当に大好きです!引き続き本編も楽しみにしています!が!暑い日が続いていますのでご無理なさらず、お体ご自愛くださいね(^^) (2020年8月13日 8時) (レス) id: fe5c27facf (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - 猫猫さん» コメントありがとうございます。ですが、この短編は完結となっておりますので、以後リクエストを受け付ける事をしないつもりです。答えられず申し訳ありませんが、ご了承ください。お話しを読んでいただきありがとうございました。 (2020年8月12日 23時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:bluemoon | 作成日時:2019年11月19日 11時