353.変わらない想い。 ページ17
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桓騎将軍が用意してくれた御車に乗り込み、咸陽までの道程を行く。朝目覚めて隣で眠っていた桓騎将軍の姿に驚き、寝台から落ちた私を「添い寝してやっただけだろ?」と桓騎将軍は鼻で笑った。掴みどころがなく、桓騎将軍はやっぱり苦手。だけど、力で屈服させようとか、手当をしてくれるあたり、優しさも持ち合わせている。
「また会う機会はあるだろう。次は…楽しみにしとけ」
不敵に笑う感じが、不安だけど…。
静かに止まった御車に、咸陽に着いたのかと帳を上げる手を止めたのは、外から揉めてる声が聞こえて来たからだ。
「貴殿達は何処の派閥だ?」
「そう言われましても、私は客人を咸陽まで送り届けろとの命で、」
「まさか呂不韋陣営の間者ではあるまいな?」
「いえ、決してそのようなお方では…、」
間違いなく疑われているのは私。
秦国内において、今は大王派と呂不韋派で争いが起きている。
ここは、姿を見せた方がいいだろう。
「騒がしいな。面倒事は呂不韋だけにしろ」
聞こえて来た声は、懐かしい。
久しく会っていなかった。
帳を上げ、外の様子を窺う私と相手の視線が交わる。
「貴様は…、」
「久しぶりだね、成蟜」
「はっ、何が久しぶりだ。貴様の事など、当の昔に忘れておったわ」
「そう…だよね…。」
「顔も見せず、俺を忘れていたのは貴様の方だろう…。会えぬとわかっているのに、会ってはならんとわかっているのに、想いは消える事はない。フッ、運命とは残酷なものだな」
王弟反乱からの数年越しの再会。謹慎は解かれたとは政から聞かされてはいた。会いに行こうと思ってはいたのに、度重なる戦場への出向に時は流れ、それもままならなかった。
「なんか、成蟜変わったね?」
「人はそう簡単には変わらぬ。Aと同じようにな」
「私も変わってない?成長してないとか?」
「昔よりは多少マシにはなったと思うが」
褒められてるのか、貶されているのか
どっちなんだろう。
「……綺麗になったな」
「え、」
「そういうのは聞き流せ、ただの戯言だ」
御車の扉が開けられ、成蟜が私に手を差し伸べる。
「俺の御車に乗れ。貴様…いや、貴様と呼ぶと昔怒鳴られた事を思い出す。私にはAという名前があるからそう呼べと」
「懐かしいね…。」
「俺は片時も忘れた事はない。Aと話がしたいだけだ」
だから手を取れと、成蟜は言った。
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ゆずぽんず(プロフ) - 続き、楽しみにしてます。 (2月25日 22時) (レス) @page50 id: 25d2c56152 (このIDを非表示/違反報告)
ナタデココ(プロフ) - 本当に続き楽しみにしてます( *´꒳`* ) (11月30日 7時) (レス) id: bb115dbd7a (このIDを非表示/違反報告)
ぽぽ(プロフ) - こんにちは、コメント失礼致します。シリーズ全て読ませて頂いています!相変わらずお話が面白くて感激しました…!続編楽しみにしています!! (2023年4月23日 23時) (レス) @page50 id: 3d6874678d (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - 9、楽しみにしています (2022年12月6日 16時) (レス) @page50 id: 9084a50d79 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - Ayuさん» 初めまして。コメントのお返事遅くなり申し訳ありません。私もキングダムに出会えて、この作品を作るまでになりました。更新頑張りますね!お時間ある時にでもまた遊びに来て頂ければ幸いです。コメントありがとうございますね。 (2022年10月5日 21時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:bluemoon | 作成日時:2021年1月10日 13時