324.行動。 ページ37
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「っ…!行かせるかよ!」
「信!」
身を乗り出して私の手を掴んだ信は、汗で滑り落ちそうな手を強く掴み自分の元へと引き戻そうとする。その隣ではカイネさんも私と同じような状況で、必死で貂がカイネさんの手を掴んでいた。
蕞の結末を見越して一緒に来いと貂を勧誘するカイネさんに、落ちそうになる貂の体も信が掴む。
「A、お前も私と共に来い。李牧様の側で、私と同じく李牧様を支えろ。あの方がこれ以上お前を思って憂いる事がないように」
「ふざけんな!Aは何処にも行かせねェ!俺らがいる限り蕞にも手出しはさせねェ!!」
自分に向けられた槍に気づいたカイネさんは、掴んでいた貂の手を離し地上で待ち構えている自軍の兵の中へと落ちて行った。隣でもカイネさんの後に続けと、奇襲に失敗した傅抵さんも自軍の元へと戻って落ちて行く。
「貂、お前どういうつもりだ!アイツが敵だって…、」
「分かってるよ!オレが間違ってる…。」
胸ぐらを掴み怒鳴る信に、顔を上げた貂の目には涙が浮かんでいた。今どんな状況に立たされているのか分からない訳ではない。貂の行動が間違っていると言うことは、貂自身が一番分かっている。
だから、自分の行動を悔いごめんと許しを乞う。
「……敵が攻めて来てんだ。お前は俺らの軍師らしく振る舞え」
ポンと貂の頭に乗せられた信の手に、貂は頷いた。
流れ混んできた敵兵達は主力の指揮官達を失い、攻撃は弱体化。夜襲を受けたにも関わらず、皆の士気は下がってはいなかった。
「A……血が出てる」
「これぐらいどうって事、」
「お前をアイツの元に行かせたくなかったから…。悪ぃ、強く掴み過ぎて痛くなかったか?」
「私そんなに柔じゃないよ。信も知ってるでしょ?」
「知ってるから、余計に心配になるんだろうが…。」
唇に付いた私の血を指先で拭った信は、「何処にも行くなって言った約束忘れるなよ」と私を抱きしめてから、自分の持ち場に戻って行った。
「貂、大丈夫?」
「あ、ああ…。オレのせいでAにも迷惑かけてごめん…。オレがもっとしっかりしないと、オレの手に皆の命がかかってんだ…。」
思い詰めたような表情は一瞬、貂は笑い返してくれたが、その笑顔に陰りが見えたのが心配だった。
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bluemoon(プロフ) - イルカさん» コメントありがとうございます。推しが同じ読者様に会えて嬉しいです。花嫁本編では王騎将軍の救済ルートを避けてしまったので、中編集で幸せになっていただきたいと思います。王騎将軍とのお話久しぶりに書く気がします。まずは花嫁8ですね。頑張ります! (2020年12月27日 8時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
イルカ - 私は王騎将軍オシなのですっごく楽しみです!!シリーズ8も楽しみにしてます。 (2020年12月26日 23時) (レス) id: 4dcbd5d17d (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - ノンさん» テストお疲れ様でした。アニメ楽しみですね!どんな声優さんが演じてくれるのか、情報を解禁されるのもワクワクしますね。私ももう少しでお仕事が長いお休みに入るので、更新頑張ります!作品に遊びに来ていただいてありがとうございます。 (2020年12月21日 21時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
ノン - 執筆活動お疲れ様です!!無事にテストが終わりゆっくりできる時間が出来たので小説を読みに来ました!これからの展開が楽しみです!春にはキングダムのアニメ3期も再開されるので今からキングダム熱を上げています笑笑 (2020年12月21日 17時) (レス) id: a804f7d386 (このIDを非表示/違反報告)
bluemoon(プロフ) - Tomoyoさん» お久しぶりです。三連休ですか、いいですね。明日から私はまた仕事です…。時間を見つけてこれから更新頑張りたいと思います!コメントありがとうございます。 (2020年11月22日 21時) (レス) id: 4f57fd01cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:bluemoon | 作成日時:2020年6月20日 15時