期待値ゼロの声を聞くもの。２【鬼滅の刃】

46.記憶２ ページ1

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遠い記憶の中、父の顔も母の顔も思い出せず、唯一思い出せるのは優しい男性の面影。ぼんやりとした映像に、顔はわからない。付いておいでと、寒さで震える私の手を強く握り、言われるままに歩き出した。


心地よい声が胸に染みて、いつまでも聞いていたい。
癒しのある声は何かも優しく包んでくれる。


「マジで寝顔可愛いんですけど…」

「確かにずっと見ていられるな…」

「………」

「この流れできたら、伊之助なんか言えよ！無言でじっと見つめてるとか、お前の脳内絶対なんか変なこと考えてるだろ！何故そんな事がわかるか、それは俺も同じだからだ！！」


うるさい…。
人の寝床で騒がないで欲しい。


主に善逸の声がうるさすぎて、寝ていられない。


「お前らさ、ほんと迷惑。これ以上騒ぎ立てて姉さんを起こすようなら、殺すよ？」

「いやあああ！！殺すとか物騒なこと言わない！Aの寝顔見に行こうって言ったの炭治郎じゃん！何、我関せずみたいにキョトンとしてるわけ！？」

「寝顔は見に行きたいとは言ったけど、善逸は添い寝しようと言ってたじゃないか」

「炭治郎！？俺を売るなよ…っ！！」

『はぁ…善逸大声出さないで…』


なんで俺だけ？って、一番うるさいのが自分だって自覚ないのも問題。回復機能訓練もせずに、私の部屋に皆が集まってるのも問題か…。


「姉さん…」

『累、また自分の部屋で寝てなかったの？』

「姉さんの側じゃなきゃ寝られない。姉さんに抱きしめられて眠ると安心できるから」

『そうだとしても…』


どっかで線引きは必要で、一応規則的なことは作ってみたものの。
累は私の側を片時も離れる気はないようだ。


規則的なものと言っても、自分の部屋で寝ること
修行の時は大人しく部屋で待ってること
柱の人達との話し合いに同行しないこと


まぁ、どれも守られたことはないんだけど…。


「はい！？お前、弟だからってふざけんなァァ！！毎日一緒に寝るとか、そこは夢の国ですか！俺なんてむさ苦しい男共に囲まれて寝てるってのにィ…！」

「むさ苦しいってな…。それより伊之助どうしたんだ？さっきから黙ったままじゃないか？」

「コイツの寝顔を見てたらなんかホワホワが、」

「炭治郎、伊之助…ちょっと来い」

「まだ来たばかりじゃないか」

「いいから来いって言ってんだろっ！！」


善逸の圧に、炭治郎達は部屋を出て行った。


「やっと静かになった…」


累は私の腰に抱きつくと、姉さんまだ寝てていいよと私に言った。

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