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5日目-2- ページ41

「何ぼけっとしてんだ。着いたぞ」


怪訝そうな顔をした左馬刻さんは、いつの間にか車から降りていて、私に降車を促した。





どうしよう、殺される、どうやって逃げよう____





私は頭をフル回転させていたが、近くにぽつんと立っている建物を見て、呆気に取られた。



緑が生い茂る木々に囲まれた"それ"は、微かに湯気が立ち込め、しんとした心地よい静寂に包まれている。


そして大きく掲げられた木製の看板に書かれていたのは、





「温泉……………?」


その2文字だった。




「行くぞ」


左馬刻さんに手を引かれ、温泉旅館らしき建物に入っていく。


上がり框で指をつき、丁寧なお辞儀をしていた綺麗な女将さんの案内で、奥の一室に通された。



「ごゆっくりどうぞ」


ぱたん、と襖が閉じられ、私たちはあっという間に2人きりになってしまった。


大きな窓の外には、普段は見ることの出来ない山、川、滝などの大自然が広がっている。



しかし、それをゆったり眺める余裕はない。




「メシと風呂、どっちが先がいい?」


左馬刻さんに聞かれ、私はしばし考え込んだ。




____ご飯は恐らくこの部屋で2人で食べるはずだ。

そしてこういう旅館は和食のコース料理を出してくれるだろう。

なら、最低でも食事に1時間以上はかかる。


2人きりで、1時間以上。




うん、ムリです。



「お風呂でお願いします」

「……じゃ、行くか」


左馬刻さんは荷物を下ろし、部屋に準備されていた浴衣やタオルをまとめて渡してくれた。

2人で部屋を出て長い廊下の先にある浴場へ向かう。




___私がお風呂を選んだ時、左馬刻さんが少しだけ悪い笑みを浮かべていたように見えたのは、気のせいだろうか。


ふと思ったが、私は古風で魅力的な旅館に夢中で、その疑惑はすぐに頭の隅に追いやられた。


しかし、程なくして_____








それが気のせいではなかったことを、思い知る。

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矢野いと(プロフ) - 百面相さん» こちらこそコメントして頂きありがとうございます。とても力になります!完結まであと少し、お付き合い頂けると嬉しいです。よろしくお願いします! (2019年5月20日 17時) (レス) id: 44c4b06050 (このIDを非表示/違反報告)
百面相(プロフ) - ストーリー物で唯一楽しみにしている作品です!ニヤニヤしながら見させて頂いています…。素晴らしい作品を有難うございます! (2019年5月18日 22時) (レス) id: 5fbb166415 (このIDを非表示/違反報告)
矢野いと(プロフ) - ぱぴぷぺっぽー!さん» そう言ってもらえると嬉しいです。頑張ります! (2019年4月28日 9時) (レス) id: 44c4b06050 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぴぷぺっぽー! - おぁぁぁあ!!!!!凄い好み!この小説!!!更新頑張ってぇぇ!! (2019年4月24日 19時) (レス) id: 73667381e3 (このIDを非表示/違反報告)
矢野いと(プロフ) - すずさん» ありがとうございます!励みになります(^-^) (2019年4月20日 19時) (レス) id: 44c4b06050 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:矢野いと | 作成日時:2019年4月9日 12時

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