雪は雲とともに【3】 (ページ8)

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第68話ページ8

ボンゴレに多大な額の請求書を送った日の夜。

「………どこだよ、ここ」

なんとも不思議な体験をしていた。確かに布団に入って眠ったはずなのに、意識がはっきりしている。いや、し過ぎている。

春の穏やかな風景を切り取ったかのような空間。瑞々しい青草のなかに色とりどりの花が咲き誇っていた。僕はその中心を流れる小川の長洲に立っていた。……白いワンピースを着て。

夢、かとも思ったが素足に触れる水の感触は本物で。……はて？

―――サク、という草を踏む音に振り返れば。

『ずっと、君を待っていたんだ』

色彩は違うが僕とそっくりの男性(だよね？)が立っていた。

どこか熱っぽく見つめてくる瞳は紫水晶のように輝き、白銀の髪の間で光っていた。9等身もあるルックスは意図も容易く僕たちの距離を縮める。

どこか浮き世離れしている彼は、ただまっすぐに僕を見下ろす。

不思議と、怖いとは感じなかった。……それどころか、何処か懐かしく思う。

「………貴方は？」

『僕は、ネーヴェ』

「ネー、ヴェ？」

繰り返す僕にそう、と淡く微笑む彼、ネーヴェ。

フワリと頬に添えられた手は、暖かかった。

『今日は君に、伝えたいことがあって来た』

そう言って彼が見せたのは僕の白い演算宝珠。……まさか。

『賢い君は、既に気付いているのだろう？』

「っ!?……けど、それはあり得ない。あり得るはずないんだ！」

バッと彼の胸を押し返し、距離をとる。つい先日立った仮説。何者かの気配を感じていたそれが、日に日に強くなっていたのは気付いていた。

そう。それはまるでボンゴレリングと共鳴するかのように、強く。

『なら、こうすれば信じてくれる？』

問いかけと同時にネーヴェが演算宝珠を両手で包むと、白い炎が舞い上がった。

………沢田くんのオレンジ色の死ぬ気の炎と同じような、真っ白い炎が。

ついでと言わんばかりに、ハラリハラリと淡い雪がその中で舞う。

炎が収まった頃、ネーヴェの手の中にあったはずの演算宝珠は形を変え、真っ白な水晶のついた指輪になっていた。

「あ、ありえない……」

『これが、真実』

開いていたはずの距離はあっという間になくなり、僕の前で膝をついたネーヴェは言う。

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