第47話 ページ19
“藍川家”
まずは、特殊なその家系からおさらいしよう。
彼らの始まりは、かの有名な初代徳川将軍に使える忍びだった。
甲賀や伊賀など表立って有名な忍びではなく、完全なる影を生きる忍び。つまるところ、暗殺や内部粛清に特化した技術を持つ者。
その技は代を重ても失われることなく、細々ではあるが確実に受け継がれていた。
しかし、今から2世代ほど前の時代で謀反が起こったのだ。謀反の首謀者はその時代の当主の弟。
彼は自分より劣る兄が一族の頂点に立つのが赦せなかった。簡単に言えば醜い嫉妬である。
兄の提案で、彼らは一族が見守るなか一対一の直接対決でどちらが当主に相応しいか決めることになった。
弟は愚かな提案をする兄を嘲笑っていた。今まで自分に勝てたことのない兄に負ける訳がない、と。
しかし、結果として彼は兄に向かったが呆気なく負けてしまった。
何故なら、兄は普段は優しくそれも虫もころせないような性格をしていながらもある一点、譲れないものがあったから。
弟は兄に問うた、その譲れないものは何かと。
兄はこう答えた。
『家族を守ること』
と。兄の本心として、弟に負けたくないという気持ちも確かにあったが、それよりも。
幼い頃、自分の後を必死に追いかけていたお前を守りたかったのだと。
近年のお前は私に嫉妬していたね。確かに、技術や力はお前に劣るだろう。だけど、お前が私を倒したとしてその後はどうするつもりだったのだ？
兄の質問に弟は答えられなかった。自分はただ、兄より上の存在になりたかっただけで、兄の立つ場所の重さも苦悩も理解していなかったのだと気付いた。
すみません、すみません兄上。
兄は弟を許したが兄を慕う周りは納得いかなかった。それを感じていた弟は、藍川家との縁を切ると兄に告げ、姿を消した。
こうして一族を巻き込んだ謀反は幕を閉じた。……はずだった。
時は進み、藍川家の門を叩く2人の子どもがいた。5、6歳くらい2人の男女は出てきた家人に当主に会いたいと言った。
これを見せれば分かると言われてここに来たのだ、と。
家人は戸惑いながらも、当主に子供たちからの手紙を渡した。
差出人を見た当主はすぐ様手紙を読み、子供達を自分の部屋に通すよう家人にいいつけた。
手紙の差出人は、縁を切ったはずの弟だったのだ。
(長い)
(我慢です会長)
(……ｸﾞｩ)
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作者名：蒼 | 作成日時：2018年1月22日 16時
