もっぱら、君ばかり。（ar×in） (ページ8)

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嫁気分と旦那気分ページ8

「大ちゃん、後ろの紐結んでぇー」

珍しく二人ともオフな平日の昼時、やる気満々ないのちゃんがキッチンへ俺を呼んだ。

「え？なんか作んの？」

俺に背を向け、腰をフリフリしながらエプロンを結ぶよう促してくる。

正直これだけで十分な破壊力なんだけど…

「俺のカルボナーラ、そろそろ食べてもらおっかなって、嫌？」

まさかの手料理を振舞ってくれるらしい。

「嫌なわけ無いじゃん！むしろいいの？せっかく休みなのに、」

「も～休みだから作るんじゃん！一人で食べるのも飽きたし…」

大ちゃんは黙って食べてればいいの！なんて、上機嫌なお姫様は照れ隠しからか、俺様な態度だ。

いのちゃんは自ら嫁ぶっては、恥ずかしくなって誤魔化すことが多々ある。

そんな一連の流れが可愛いから俺はいつも平静を装うのに必死だったりする。

「なんか手伝うことある？」

「えー、大ちゃんぶきっちょじゃん、何もしなくていいよ。」

「…へ～い」

邪魔したくないし、大人しく待っていようかと思ったんだけど、

俺が離れるといのちゃんはたぶん寂しがるし、貴重な二人の時間だから。

後ろから調理工程を観察することにした。

「茹で汁を少し残しとくのがポイントなの」

「へ～」

いのちゃんはふんふんと鼻歌混じりで作業しながら、得意気に伊野尾レシピを教えてくれる。

「ふふっ」

「なに笑ってんの」

「いやなんか、新婚さんみたいだね、俺ら」

思いのままに口にすれば、ベーコンを切っていたいのちゃんの手が滑って指を掠めた。

「うわっ、大丈夫！？」

間一髪、ケガしなかったみたいで良かったけど、危なっかしくて焦る。

「もー、気をつけてよ？」

「だって大ちゃんが…」

急にしゅんとするから後ろから覗き込めば、いのちゃんは目を逸らした。

「新婚さんとか言われたら意識するだろ…ばか！」

本当にそんな一言で照れまくって手が滑ったって？
なんなの、この可愛い生き物は。

「だって、いのちゃんがこうやってエプロンして俺に手料理作ってくれるなんてさ、どんだけ嬉しいと思う？」

「へ、」

我慢ならなくて、その細い腰に腕を回して言えば、いのちゃんは小さく身を震わせた。

「俺だって、いつも大ちゃんに甘えてばっかだから…その、たまには喜ばせたいなとか…思うし…」

やっぱり恥ずかしいのか、だんだん声が小さくなって、耳も真っ赤。

「とにかく！練習したんだから、楽しみにしてて？」

「うん、もちろん」