もっぱら、君ばかり。（ar×in） (ページ9)

今日:2 hit、昨日:2 hit、合計:39,384 hit

自信作のお味は？ページ9

「大ちゃん、お皿とって～」

最後の味見を終えたいのちゃんが振り返って俺に言った。

「いつもの丸いのでいいのー？」

「うん、それとフォークとスプーンも」

なんやかんや、手こずったカルボナーラもどうにか完成したらしい。

上手に出来て満足気なお姫様はまた鼻歌を歌っている。

半同棲をはじめるにあたってのデートで買い揃えたふたり用の食器たち。

特にこの丸い平皿は使いやすいし、デザインもオシャレでいのちゃんのお気に入りなのだ。

俺が食卓の準備をしてる間に、いのちゃんは簡単に野菜を切ってサラダまで作ってくれた。

本当に良くできた子だよ…

「大ちゃんお皿ありがとう、いただきますしよ」

エプロンを脱ぐ仕草に、ちょっと勿体ないなぁなんて思いながら見つめれば、

「なに？またいくらでも作るから、ね？」

って、案外俺の気持ちなんて簡単に見透かされてしまう。

じゃあ明日はオムライスで、とリクエストしたら、えー明日ぁ？なんて言いつつ、卵がまだ残ってるか確認してくれる優しいいのちゃん。

可愛すぎるし、本当に嫁みたいに見えてくるからたまったもんじゃない。

「いただきま～す」

「どうぞ召し上がれ」

ドキドキしながら口にしたカルボナーラは、本当にプロみたいな美味しさで、自然に頬が緩んだ。

「どうかな？」

「めちゃくちゃ美味いよ、いのちゃん」

「ほんとに？うわぁ、良かった～」

たくさん作ってたもんなぁ、としみじみしつつ、いのちゃんのこだわりのカルボナーラを堪能した。

良いチーズを使ってるだけあって濃厚だし、茹で具合も計算されててちょうどいいし、ベーコンは俺好みの厚切りで、文句なしだよこんなの。

「大ちゃんのお口に合うかドキドキしたよ」

「なんやかんや、いのちゃんの本格的な手料理ってはじめてだもんね？」

「あー、そっか、確かに無いかも」

俺らは基本的に料理はしないし、何か作るとしてもお酒のつまみだったり、簡単なものを一緒にって感じだったからこんなふうに振舞ってもらったのははじめてで。

恋人が自分のために作ってくれるのってこんなに有難くて幸せなことなんだって、はじめて知った。

「いのちゃんありがとう、俺幸せだよ」

「えっ、どうしたのそんな改まって…」

自分でも珍しいと思う、こんなふうに感謝を伝えるのなんて。

いのちゃんと居ると素直になれるというか…言葉にしたい感情がたくさん溢れてくるから。

ますますそばに居たくなるんだよね。