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誰のものにもしたくは無いと、 ページ18

「大ちゃん!見て見て!」


お風呂上がり、おねむで先に寝室に行ってるはずのいのちゃんがソファから意気揚々と言った。


「え?どしたのそれ」


言う通りに見てみれば、いのちゃんのぽてっとした耳たぶにきらりと光るもの。


「ピアス開けた」

「え?まじ?」


明日からいよいよ配信ライブだからって、いきなり?
あのいのちゃんが俺に何も言わず??


「こっちもだよ」


そう言って反対の髪の毛もかきあげて見せてくれる。
…っておいおい、そっちは軟骨じゃねぇか。


「ちょ、軟骨はいきなりさしちゃダメだろ…痛くないの?」


いのちゃんの穴の具合と繊細な耳が心配すぎて慌てて駆け寄ると、あろうことかいのちゃんは両耳のピアスを勢い良く引っ張った。


「わ〜ッ!」


痛そ!と思った瞬間、するりと取れるピアス。


「じゃーん、イヤーカフでしたー。大ちゃん声大きすぎ。びっくりした?」


驚く俺にケラケラと笑いながら両手のイヤーカフを見せてくる。


…はぁもう、心臓に悪い。


「ビビった〜…いのちゃんの耳になんかあったら俺…」

「もー大ちゃんてば、お母さんみたいなんだから〜」


ごめんねごめんねって珍しく俺の頭を撫でてくる仕草がとても可愛いので一瞬でさっきの緊張感なんて吹き飛んでしまう。


いたずらっ子なお姫様はそんな俺を見て楽しそうにまた笑った。


「はぁ良かったぁ…で、どうしたのそれ」

「山田にいっぱい貰ったの」

「…は?」


サラッと言ってのけたけど、今なんて?
山田?って、あの山田?いつの間にいのちゃんとそんな…


「なんか山田が髪染めたいって話しててー、俺も染めたいけどなかなかなぁって言ったら、いのおちゃんイヤーカフは?って勧めてくれたの」

「…へぇ」


楽しそうに手元のイヤーカフを見つめながら話すいのちゃんに、なんだか胸の奥がモヤモヤモヤモヤ。


だって俺にはそんな相談してこなかったし、髪染めたかったのとか今初めて知った。


「大ちゃん?どうしたの、そんな顔して。もしかして俺、似合ってない?」

「いや、そんな事ねぇよ」


むしろ、似合いすぎててそれを提案したのが山田ってことが気に食わない、なんて。


とても口に出せる感情じゃないな、と思う。


明日はライブで、山田はいのちゃんのメンバーで、いくらプライベートに近い会話でも、仕事の相談だし。


そんなことは分かりきってるのに、無性に悔しくなった。

わがままになる欲望→←花咲く季節なので



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作者名:ららりる | 作成日時:2020年10月4日 21時

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