虚しさ ページ24
翌朝、朝早くに目覚めた。
ゾッとするような夢だった。熟睡したはずなのにどっと疲れが襲う。
焚き火の炎が消えていてホッとした。アランが消したのかな？
夢にも炎が出てきた。炎が行く手を塞ぎ、大事な人達が一人一人、炎の中に消えていく夢。
まだ弱い朝日が木々の間から漏れて私の顔を照らす。その時、ようやく異変に気付いた。自分の頭がやけに安定している。アランの服が目の前にある。
アランに膝枕してもらっていたのだった。
一方、アランはリザードンの背中に腕を組んで乗せて、腕の間に頭を沈み込ませていた。
いくら寝ていて感覚がないとはいえ、何時間も膝に頭を乗せていたらきっと痺れてしまうだろう。そう思って、頭をそっと膝から持ち上げてアランの体の下から脱出させた。そして、座っていた丸太から立ち上がろうとすると、何故か丸太に逆戻りしてしまった。
何事かと振り向くとアランが上着…彼自身のジャケットの袖を掴んでいた。
｢おはよう？｣
｢…まだ寝ていろ。睡眠不足になるぞ｣
その案を補強するように、アランはまだ目を閉じたまま眠そうな掠れ声で言った。何だか可愛い…。寝起きの悪い子供を起こしに行く母親の気持ち。
私だってきっとその日常を満喫する資格があったはずだ。そしてアランも、誰かの隣で甘えられる空間があったはずだったのだ。
私は小さい子をあやすように、リザードンの背中に沈んでいるアランを抱えて自分の膝の上に乗せた。私の膝は安眠できるような柔らかさを大体失っているが、お返しとして…
自分の膝に乗せたアランの頭に手を伸ばして、髪に指を通す。短い黒髪が指の間をサラサラと流れていく。
そのまま髪を撫でているといつの間にか寝息が微かに聞こえた。髪を撫でている手を離して様子を見ると再び眠りの世界へ入って行ったようだ。
私は慎重に膝からリザードンの背中にアランの頭を移して、忍び足で立ち去った。
アランが空になったランチボックスを手渡してきた。私は受け取って、近くの岩の上に置いた。
｢朝ごはんを作るつもりだって言ってたら…｣
｢引き止めなかった？｣
私はニヒルな笑みを向けた。立ち去ったあと、ポケモンセンターの自室に戻って、余り物で朝ごはんを作ってアランのいる場所に戻って提供していたという訳だ。
｢久しぶりに会えて楽しかった。じゃあね｣
｢ああ｣
アランは歩き去った。
心に虚しさが残っていた。長い時間を過ごしても元には戻れないということ。
自分たちの矢印が反対方向を向いていた。
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juliet(プロフ) - 頂志桜(サム)さん» 大丈夫ですよ！間違いのご指摘、有り難いです。師匠の教えには何でもついて行きます！ゲッコウガはジユンの良き相談相手であり、ゲッコウガもジユンから貰うギブアンドテイクの関係ですね。ゲッコウガが最近キテるんです(笑)。この二人にも注目です！ (2016年10月2日 20時) (
レス) id: 294ccbef1a (このIDを非表示/違反報告)
頂志桜(サム)(プロフ) - すみません、こちらも打ち間違えました(汗)。「逃逃げ込んだ」ですね。大した違いはありませんが……。どうもすみませんでした。 (2016年10月2日 19時) (レス) id: f46217bc92 (このIDを非表示/違反報告)
頂志桜(サム)(プロフ) - ゲッコウガの察し、いいですね〜。ジユンちゃんが分かりやすいのもあると思いますけれど。 あ、さっき1ページ目から通して読んでいたのですが、3ページ目の最初が「逃逃げ込んでいた」となっていましたので、ご報告させていただきますね。今更でどうもすみません……。 (2016年10月2日 19時) (レス) id: f46217bc92 (このIDを非表示/違反報告)
juliet(プロフ) - 頂志桜(サム)さん» 本当だ…！よく打ち間違いをしちゃうんです…。前にプラターヌ博士をプライベート博士と酷いミスをしたことがあって…(笑)。気をつけないと。間違いの指摘、ありがとうございます！ (2016年9月30日 5時) (レス) id: 294ccbef1a (このIDを非表示/違反報告)
juliet(プロフ) - 藍玉さん» ありがとうございます！考えている内容を早く書かないと忘れちゃうので電光石火で書いてます(笑)。アランやジユンの話を書くのが大好きってのもありますが…。これからも作品のクオリティー上昇も叶えつつ頑張ります！ (2016年9月30日 5時) (レス) id: 294ccbef1a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：sweetspring | 作成日時：2016年9月29日 17時
