燃える回想 ページ1
パソコンの液晶に映る文字はアルファベットだった。
ＡからＺまでバラバラに組み合わさって意味を成す単語を１つ残らず拾い上げて読む。
…年、ミアレ大学教授の…と…が、原因不明の火災に…少女が一人…
肌に感じる今の冷えた空気とは対照的な、熱く息苦しい空気。
今の暗く静かな室内とは対照的な、赤く燃える炎の轟音が響く家。
唯一同じなのは、頬に微かに残る、悲しみの涙の跡。
私は頭を右手にもたせかけ、ため息をつく。
その時、急に部屋のドアが開いて、誰かが入ってきたので驚いて、机の上に整頓して置いていたプリントが床に散らばった。
｢すみません！急に開けてしまって…｣
入ってきたのはシトロンだった。私は強張った筋肉をほぐして笑ってみせた。
｢良いの。足音に気付かなかった私にも責任はあるもの｣
シトロンが散らばったプリントを綺麗にまとめて、机の上に置いた。
｢コーヒーを入れました。集中できるように｣
大きめのマグカップから湯気が立ち上っている。
セレナ達の前で不機嫌を顕にしてしまったあの日もシトロンがくれたコーヒーを持って散歩しに行った。
一時間半後に帰ってきた私を見て、セレナが謝ったが私は気にしてない、と返した。私が安心させるように笑ったおかげで妙な緊張感がほぐれたが、それでもどこかで爪痕を残している。
マノンと後ほど掛け直した時のことを思い出す。
(回想)
｢ジユン、さっきは大丈夫？｣
｢うん。ごめんね、せっかく出てもらったのに｣
｢大丈夫だよ。あたしはジユンから電話がくるだけでも嬉しいから｣
マノンが屈託のない笑顔でホロキャスターを通じて見せる。
｢実は…今日、アランに偶然会ったの｣
｢本当に⁉アランは…｣
聞きたいことがあり過ぎて、言葉にならないのを汲み取った私は言った。
｢アランは元気そう。メガシンカエネルギーの回収も順調だって。特に進展はないわ｣
マノンが安心したのか、してないのか、どちらとも取れる顔をした。
｢そっか、なら良かった。いや、良くない…？｣
｢どうしたの？｣
マノンが考えるように眉をひそめたので聞いた。
｢アランとジユンに進展がないってことは、ちょっと喜ばしくないかなって｣
｢何でそう思うの？｣
｢だって、ジユン、すごく疲れた顔、してるから｣
マノンの答えに笑えるような笑えないような気分になった。
そして、現実に戻る。
｢シトロンは4年前の放火事件は知ってる？｣
｢名前だけ知ってます｣
瞼の裏であの炎が踊っていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 11人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
juliet(プロフ) - 頂志桜(サム)さん» 大丈夫ですよ！間違いのご指摘、有り難いです。師匠の教えには何でもついて行きます！ゲッコウガはジユンの良き相談相手であり、ゲッコウガもジユンから貰うギブアンドテイクの関係ですね。ゲッコウガが最近キテるんです(笑)。この二人にも注目です！ (2016年10月2日 20時) (
レス) id: 294ccbef1a (このIDを非表示/違反報告)
頂志桜(サム)(プロフ) - すみません、こちらも打ち間違えました(汗)。「逃逃げ込んだ」ですね。大した違いはありませんが……。どうもすみませんでした。 (2016年10月2日 19時) (レス) id: f46217bc92 (このIDを非表示/違反報告)
頂志桜(サム)(プロフ) - ゲッコウガの察し、いいですね〜。ジユンちゃんが分かりやすいのもあると思いますけれど。 あ、さっき1ページ目から通して読んでいたのですが、3ページ目の最初が「逃逃げ込んでいた」となっていましたので、ご報告させていただきますね。今更でどうもすみません……。 (2016年10月2日 19時) (レス) id: f46217bc92 (このIDを非表示/違反報告)
juliet(プロフ) - 頂志桜(サム)さん» 本当だ…！よく打ち間違いをしちゃうんです…。前にプラターヌ博士をプライベート博士と酷いミスをしたことがあって…(笑)。気をつけないと。間違いの指摘、ありがとうございます！ (2016年9月30日 5時) (レス) id: 294ccbef1a (このIDを非表示/違反報告)
juliet(プロフ) - 藍玉さん» ありがとうございます！考えている内容を早く書かないと忘れちゃうので電光石火で書いてます(笑)。アランやジユンの話を書くのが大好きってのもありますが…。これからも作品のクオリティー上昇も叶えつつ頑張ります！ (2016年9月30日 5時) (レス) id: 294ccbef1a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：sweetspring | 作成日時：2016年9月29日 17時
