犠牲者 ページ49
《アランside》
ジユンは代表から聞こえない場所まで歩いて、ある場所で止まった。
風が俺とジユンの間を通過する。
｢メガシンカエネルギーを集めに行くのね。ハリさんを救うために｣
｢ああ｣
ジユンはそれきり黙った。風で洒落たワンピースの裾が僅かに揺れる。
これだけのために俺を呼んだのではないことは分かっている。
だが、強制はしない。ジユンが話し出すまで待った。ジユンは俯いていたが、しばらくして口を開いた。
｢アラン…あなたは本当に良い人だった。カッコよくて、クールで、優しくて、真面目で…そんなアランが大好きだった。今も好きだよ｣
そしてジユンは顔を上げた。そのダークブラウンの瞳に涙が浮かんでいるのが見えた。絶妙な角度を保ち、涙がこぼれないようにしている。
｢でも…もう、一緒にいられない｣
どこかで俺はそんな予感がしていた。そう言われても驚かない自分がいた。
理由は、俺がマノンを傷付けたから。ジユンも傷付け、遠縁ながらハリマロンを昏睡状態にさせてしまったから。
｢私はアランを止めたりしない。だって…ハリさんを救うにはアランがやり遂げないといけないから。マノンの笑顔を取り戻せないから。
母が言ってたの、『何事も全てやり遂げろ。中途半端で終わらせてはいけない』って。だから、最後まで頑張ってやり遂げてね。これが…最後に私が言いたかったこと。あと、リザードンも大切にしてね｣
ジユンの涙が頬を静かに流れ落ちた。そしてジユンの震える手がハンドバッグから１つのボールを掴んで、弱々しく放った。ボールからエーフィが出てくる。
｢さよなら、アラン。あなたと一緒に過ごせて本当に良かった｣
ジユンはエーフィのテレポートで消えた。
俺はそのまま立ちつくしていた。ジユンのいた場所に風が通った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 15人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
藍玉 - 読みました！なんだか、大分雰囲気が変わりましたね。とても読みやすいです！話も続きがとても気になります…！私の意見を聞いてくださってありがとうございました。これからも頑張ってくださいね！ (2016年9月10日 23時) (
レス) id: 2a90760f0b (このIDを非表示/違反報告)
juliet(プロフ) - 藍玉さん» ざっと研究して、行間を空けて見ました！行間を空けてみるだけで結構読みやすさに差が出ますね…！是非ご確認ください！ (2016年9月10日 22時) (レス) id: 294ccbef1a (このIDを非表示/違反報告)
juliet(プロフ) - 藍玉さん» 貴重なアドバイス、ありがとうございます。実は自分でも詰めすぎなのは百も承知なのですが、一話でどれだけのことを書きたいというノルマをある程度決めてまして…。そのノルマに追いつけるように書いたところ、このザマに…。他の作品など参考にして研究してみますね！ (2016年9月10日 5時) (レス) id: 294ccbef1a (このIDを非表示/違反報告)
藍玉 - julietさん» はい、もちろんそのつもりですよ！…えぇっと、続けて私がコメントしてすみません。…生意気ながらアドバイスなんですが、少し文章が詰め過ぎていると感じるので行を空けてみてはいかがですか？今のままでもとても素敵な作品ですが。…あ、私はシリアスも大好きですよ！ (2016年9月10日 0時) (レス) id: 2a90760f0b (このIDを非表示/違反報告)
juliet(プロフ) - 藍玉さん» お返事遅くなってすみません！コメント、ありがとうございます。最近はシリアスが強めなので甘い展開を入れるのが難しいのですが頑張ります！読者の皆さまがどう思っているのか気になっていたので参考になりました。これからもご愛読宜しくお願いします！ (2016年9月9日 17時) (レス) id: 294ccbef1a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：sweetspring | 作成日時：2016年9月5日 16時
