第2話 ときめく ページ3
そんな芥川を暫し見た後、先刻から押し黙っている樋口ちゃんに視線を滑らした。其れに気付いた樋口ちゃんは、すかさず私と視線を合わせた。
「でも樋口ちゃんなら、私何時でも来て貰って大丈夫だからね。芥川が厭になったら、私の所へおいで。ね?」
私はそう言って微笑んでみせた。
「……」
「芥川、其の目やめて」
芥川が私を、「此奴、何言ってんの」とでも言いたいかの様な顔で見てきたので突っ込んだ。
そして樋口ちゃんはというと。
「小泉先輩、有り難う御座います」
迚も嬉しそうに幸せそうに笑っていた。
「……、樋口。其れは詰まり、奴の言葉を肯定しているという事か」
「え!? あ、いや、誤解です! 決して芥川先輩が厭になったという訳ではありません!」
威圧的に樋口ちゃんを見据える芥川と其れに慌てる樋口ちゃんを見て、
「此の様子じゃ、私の所へ来る事は無さそうね」
其の微笑ましい光景を眺め、目を細めた。
「2人とも、そろそろ戻ろうか」
「あ、そうですね!」
「あぁ」
では行きましょう、と樋口ちゃんは歩き出す。
私は理由も無しに其の小柄な背中を見詰めていたら。
ぽん。
と、頭に何かが乗った様な感じがし、横を向けば芥川が私の頭に手を乗せていた。
「あまり無理はするな。……首元触る所、貴様の癖だ」
此方を見ずただ前だけを見据えて、ぶっきらぼうにぐしゃぐしゃと私の頭を撫で、其れだけ言って芥川は歩き出した。
私は今きっと惚けた顔をしているのだろう。
だって、全部バレていたんだ。芥川に。
本当は、単独任務が怖かった事。
全く表に出していなかったのに。樋口ちゃんだって、気付いてなかったのに。
芥川……。
「狡いよ……」
私は誰にも聞こえない小さな声で呟いた。
私の体は、全身の血液が沸騰したかの様に熱かった。
そんな光景を、真っ黒い瞳で見詰めるあの子に、浮かれていた私は全然気付きやしなかった。
*
其れから私は芥川、樋口ちゃんと共にアジトへ帰還した。
其の頃には、私の体の火照りは収まっていた。
「では、僕は頭領に任務報告をしてくる」
「あ、そっか。じゃあ行ってらっしゃい」
「え、小泉先輩は?」樋口ちゃんが不思議そうに聞いてきた。
「私は報告書を書いて、其れから頭領に報告しに行くから良いの」
樋口ちゃんは、そうなんですか、と少し肩を落とした。
「樋口、早く来い」
「あ、はいっ! ……ではA先輩、失礼します」
きっちり頭を下げて、先を悠然と歩く芥川を急いで追い掛けて行った。直に2人は、廊下の奥の闇の中へと消えていった。
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叶葉和音 - 皆様、コメント本当にありがとうございます!皆様のお言葉は、これからの作者の励みになります…!更新は諸事情により、だいぶ不定期とかのレベルではないくらい遅いですが、どうか見守って下されば幸いです。 (2017年3月11日 4時) (レス) id: c4535f63fb (このIDを非表示/違反報告)
黒蝶貝@ - 樋口さん好きなので嬉しいです!更新、頑張って下さい。 (2016年12月19日 17時) (レス) id: 96554d5c1c (このIDを非表示/違反報告)
しろ - 全裸待機ですwww (2016年12月13日 22時) (レス) id: c502ce4b81 (このIDを非表示/違反報告)
桃月(プロフ) - こういうの待ってました!!続きが気になります!!更新頑張って下さい! (2016年12月13日 7時) (レス) id: 7b012793f7 (このIDを非表示/違反報告)
虹夏音 - 更新待ってます! (2016年12月11日 16時) (レス) id: 60acc756ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:叶葉和音 | 作成日時:2016年12月4日 15時